和製ホームズ&ワトスンが
3つの難事件に挑む

 「蓮花蛭(はすかひる)の猫」など収録作のタイトルを見ただけでぴんと来たあなたはたぶんシャーロキアン。お察しの通り、各話はホームズものの元ネタをアレンジしたミステリー仕立てになっている。推理役は、副業で岡っ引きをしている美形の獣(けもの)医者・正宗だ。下っ引きの佐助がいわばワトスン役だが、ちょっとおっちょこちょいで小銭稼ぎが好きなあたり、青池保子が描くジェイムズ君似を連想した。クールで頭の切れる正宗とは好対照でよきバディぶりを発揮。

 「そあ橋綺譚」は、売れっ子役者の駒形菊次郎が水死体で発見されたところから幕が開く。遺体のキレイさをいぶかしみ、佐助を連れて聞き込みに回った正宗は、実は小町娘のお珠と菊次郎は恋仲だったが、菊丸が加わり、三角関係がもつれていたことを知る。弟子の菊丸が、菊次郎を橋から突き落としたと自白はしたが、ここから推理は二転三転。真相はかなり切なくて、ずしんと来た。

『獣医者正宗捕物帳』 (既刊1巻)

板に貼り紙をするアナログなSNSが、ツイッター=「戸板(といったー)」、LINE=「ら印(らいん)」などと名づけられて登場したり、星徒(ほすと)、混見家(こみけ)、黒猫飛脚など、現代の社会風俗に通じるものも。謎解きも上質で、ホームズファンならずとも楽しめる。
逢坂みえこ 小学館 429円

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Column

男と女のマンガ道

男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!

2018.12.02(日)
文=三浦天紗子

CREA 2018年12月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

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