世紀のロングセラーは“クセ”の固まりだった?

 ひょっとすると、日本でいちばん有名な化粧水って、今やこれなのかもしれない。少なくとも、ほぼ40年間、“トップセールス”を続けている、“とんでもない化粧水”であるのは確か。言わずと知れたアルビオンの名作“スキコン”である。

 ある種、生きながらに“伝説化”したこの一本も、もともと“お手入れフルコース”が揃うシリーズの中の化粧水の一本にすぎなかったのに、本当にじわじわじわじわ支持を増やして、いつの間にかすごいことになっていた。言ってみれば、AKBにおける前田敦子みたいな存在?

 しかし、さすがのスキコンも、放っておいたら、勝手に売れた……わけじゃない。この化粧水の“潜在能力”に気づいたメーカーが、ドロ臭いプロモーションをやって、草の根的に支持を増やしたのだという。それは、コットンにこのスキコンを含ませて、ビニールの袋に入れて、「使ってもらえば良さがわかるから」と店頭で手渡し続け、使ってみた人が次々虜になっていったのだ。

肌の自己回復力を高めて健やかな状態に維持してくれる伝説的化粧水“スキコン”。そのスキコン同様、北海道で開発された、新種のハトムギ「北のはと」から抽出したオリジナルの美容成分「濃縮ハトムギエキス」をベースとしたフェイシャルソープが登場。きめ細かな泡で透明感のある肌に洗いあげる。

(1) 薬用スキンコンディショナーエッセンシャル[医薬部外品] 165ml¥5250

(2) スキンコンディショナー フェイシャルソープ 100g ¥3990/アルビオン

 独特の“白濁”は油分を含んでいる証。だから肌あたりが何ともなめらかなのに、スッとする。加えて何というのだろう、いい意味で個性の強い清涼感ある香りと相まって、明らかにクセになり、本当に麻薬的にやめられなくなるのだ。逆に言うと、麻薬性がないと、ここまで歴史的なロングセラーにはならなかったはず。

 じつは、スキコン特有の清涼感ある香りが「ちょっと強すぎる」という声もあり、“微香性のスキコン”がかつて開発されたことがあるが、これがまったく売れなかったという。やっぱりあの香りにこそ麻薬性がある何よりの証拠。

 そのスキコンの魔性をそっくり引き継ぐ“スキコンソープ”がデビューした。じつに18年ぶりの新製品である。これがまあ見事に、スキコンをそのまま忠実に固型ソープにしていて、独自の効果までをほぼそのまま引き継いでいるのだ。当然のごとく、濃縮ハトムギエキス配合、肌が生まれ変わる力を高める角質代謝リズムを正常化するから、ともかくその肌の“弱いところ”に効き、ニキビもくすみも肌アレも、トラブルにぐるりと効いてしまう万能パワーをもっている。にもかかわらず、メイクも落とせる、W洗顔のいらない洗浄力を併せもっているのだ。

 今、“洗顔スキンケア”がひとつのトレンドになっているけれど、これはむしろ、スキンケアをそのまま固型ソープにして洗浄力を与えた、もうひとつのスキコン。そのトリートメント効果と香りを再現するのは、非常に難しかったというが、絶対に妥協しなかったのは、スキコンのDNAを注ぎ込まなきゃ意味がないから。泡のやわらかさ、洗いあがりのなめらかさと透明感は、スキコンの仕上がりにそっくり。だからやめられない。スキコンの魔性はここにも生き生き、息づいている。

Column

齋藤 薫 “風の時代”の美容学

美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。

2012.06.16(土)

CREA 2012年7月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

女が会社を辞めるとき

CREA 2012年7月号

働き方は自分でデザインする 一生ものの仕事術!
女が会社を辞めるとき

特別定価 650円(税込)