ボズ・スキャッグスと写実主義

ボズ・スキャッグス『シルク・ディグリーズ』(1976年)

うつ向いた横顔と背中にたまらなく愛を感じる、そして真赤なつめと女の脚がおもわせぶり。
サンフランシスコの洒落男ボズの絹のようになめらかで艶やかな素敵なアルバム

 このアルバムの録音メンバーが後にTOTOを結成することなどから、AORのスタート地点として語られることも多い、ボズ・スキャッグスの1976年発表の名盤。

 一見「そんなにダサくないじゃないか」と思うのだが、この帯は実に雑な仕事である。今一度、ジャケット写真とキャッチコピーを交互に眺めてみていただきたい。

 ジャケット写真の情景をご丁寧に文章で説明しているだけなのだ。

 英語では消費者に伝わりにくいアルバムの内容や参加ミュージシャンの情報を消費者に明示する、という帯本来の目的を完全に見失っている。

 キャッチコピーから新たに得られる情報は「素敵なアルバム」であるということぐらいだろう。

 アルバムタイトルを何とか無理やり詰め込んだ「絹のような」も痛々しく思えてくる……。

 まあ、そんなことは置いといて、名バラード「We're All Alone (二人だけ)」で心洗われよう。

2017.12.05(火)
文=福田直木(ブルー・ペパーズ)
撮影=平松市聖