とにかくいろいろ溢れがち?

エアプレイ『ロマンティック』(1980年)

溢れるロマンティック感覚!!

 「逆に」短い文章の方が、ワードの持つ破壊力が増幅されることがある。その代表例がこのアルバムだ。

 まず目に飛び込んでくる「ロマンティック感覚」というワード。

 「ロマンティック」を名詞化したいのならば「ロマンティシズム」とすればよいのだが、カタカナ英語と「感覚」の同居が、何とも言えないダサさを生み出している。言い過ぎだろうか。

 こんなことを書いていると、次第に「溢れる」も気になってくる。「満ちた」や「一杯」でなく、なぜ溢れなければならないのか。この時代は色々と溢れがちなのか。

 ……と、これだけ帯にいちゃもんを付けておいて言うのもアレなのだが、作品自体は本当に偉大なアルバムだ。

 セールス自体は振るわなかったものの、メンバーのデヴィッド・フォスターとジェイ・グレイドンが作編曲家やプロデューサーとして関わった音楽が1980年代のシーンに与えた影響は、洋楽・邦楽ともに計り知れない。

 収録曲「Nothin' You Can Do About It (貴方には何も出来ない)」を聴いて何も感じないのならば、AORを聴くのは止めておいたほうがよいだろう。

2017.12.05(火)
文=福田直木(ブルー・ペパーズ)
撮影=平松市聖