今のシアトルを代表するクールなシェフ

パブリック・マーケットの近くではシアトルらしい風景が味わえる。

 現存する市場としては全米一古いという「パイク・プレイス・マーケット」は、市民と観光客とでいつもいっぱいだが、その横、ビクター・シュタインブリュック公園からの眺めがなかなかよい。

 シアトルの先住民であるネイティブアメリカンのトーテムポールが立っていて、エリオット湾を前にカップルや家族連れが寛ぐ。『FIVE BY FIVE』のフィルムでも「Touch」ではネイティブアメリカンの木彫りの匠、「Sight」ではブルース・リーがエリオット湾に浮かぶボートの上から見るシアトルが出て来た。シアトルの一つの心象風景なのだろう。

ウォーターフロントには巨大な観覧車なども。

 パイク・プレイス・マーケットの周辺には、おいしそうなベーカリー、カフェ(スターバックスの1号店も)も並び、ここで買い食いをしてぶらぶら歩くのも楽しい。マーケットにも新鮮な野菜や果物、魚が並ぶ。

 フィルムの「Taste」では、島にあるファームから搾り立てのミルクと手摘みされたベリーが、フェリーに乗った車でそのままアイスクリームショップに運ばれ、子供が喜んで作り立てのアイスクリームを頬張る。本当にそのままの光景がここにはある。

 このサンダンス映画祭で腕をふるったシェフのレストランは、食材の持ち味を引き出すクリエイティビティが際立つおススメの2軒だ。

「ヴェスタル」で食前に頼んだカクテルは、ライウィスキーがベース。ベリーの甘酸っぱいジュースがアイスになって浮かんでいる。

 1軒目はジョシュ・ヘンダーソンがオーナーシェフの「ヴェスタル」。

カウンターの目の前でどんどんクリエイティブな料理が出来上がる。

 ライブ感のあるオープンキッチンは、炭火焼きの炉の周りをカウンターが囲み、日本の炉端スタイルをとびきりお洒落にしたよう。この炭火でローストした肉や魚にナッツやベリー、そして柚子胡椒などをアクセントに使う。

左:ポークにキャベツのチップスをのせて、カボチャとローストオニオンのピュ―レを添えて。
右:ジョシュのパスタは、シグニチャー。サンダンス映画祭でも小さな皿でサンプルが配られた。

 そして秀逸なのが、サンダンス映画祭でも出されたオリジナルのパスタ。酵母を使ったパスタ、砕いたペッパー、それにスモークしたイースト・バターというシンプルな組み合わせだが、もちもち、まったり感にちょっと味噌味を思わせる深いソースの味がたまらない。

チームワークのよい、ジョシュとスーシェフ。

Vestal(ヴェスタル)
所在地 513 Westlake Ave N, Seattle, WA 98109
電話番号 206-456-2660
http://vestalseattle.com/
※現在一時的に閉店中。カジュアルなコンセプトで2017年5月頃に再オープンの予定

左:入り口はこんなに小さい。
右:そして奥にはエレベーターが隠れている。

 もう1軒は、ジェイソン・ストラットンがシェフを務める飛び切りスタイリッシュな「エムバー」。

 入り口のウェイティング・バーは、小さく設けられていて、一瞬「ここ?」と思うが、奥のエレベーターでレストランに向かうと、その開放感と大きな窓からの眺めにびっくり。屋外の席もある。ここは、モダン中東・地中海料理で、スパイス使いがエキゾチックさを際立てている。

シンプルな赤カブとチーズのサラダと、魚は“Kampachi”。レモンとパッションフルーツで。
牛フィレのグリルに、コニャッククリームをかけて。華北山椒がエキゾチックな香りを放つ。
若手注目シェフのジェイソン。「エムバー」を開いたのは2016年。

MBar(エムバー)
所在地 400 Fairview Ave N, Seattle, WA 98109
電話番号 206-457-8287
http://www.mbarseattle.com/

2017.03.21(火)
文・撮影=小野アムスデン道子