サウンドプロデューサー・鈴木まなかの才能
伊藤 その中でもサウンドプロデューサーの鈴木まなかは数年前から注目していました。学生時代に作曲やDTMの勉強を始め、2011年に17歳で作曲家としてメジャーデビュー、現在23歳。10代にして120曲以上もの楽曲を提供したり、AKB48グループ最年少の作曲家として注目されたり。モデルをやっていたということからも分かるようにビジュアルもイケテルもんだから、音楽系のメディアでもなにかと取り上げられる。
山口 まさにUltron世代ですね。
伊藤 です。そして簡単に言うと女子力が高い。今までいなかったタイプのクリエイターが出てきたなって思っていたんだけど、同時にこれからはこういうクリエイターが上がっていくなって、鈴木まなかの登場で確信しましたね。今まではアイドルは大人が作っている印象があったけど、これからは女子力があるクリエイターが作っていくようになると思う。これはアイドルだけでなくて女性アーティストにだってアニソンにだって言えること。音楽クリエイター業界に女子旋風が起きていますね。
山口 このコラムでは何度か訴えていますが、改めて伊藤さんがイメージする「Ultron世代」の定義を教えてもらえますか? 語源は、映画『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』でしたよね?
伊藤 そうです。今年の真鶴のキャンプ〈外部サイト〉の時に若手クリエイター達と飲んでいるときに命名したんですが、単純にULTRONという響きと、映画に出てくる人工知能というのがツボでした。団塊世代、しらけ世代、新人類世代、バブル世代、ゆとり・さとり世代など、それぞれの時代に大人が若者たちを揶揄する名をつけてきました。けど、そろそろ子供心を忘れた大人が若者たちを揶揄するのではなく、彼らの才能をリスペクトし、新しいものを受け入れること願いつつ、カッコイイ響きの世代名を付けたかったんです。定義としては、ざっくりとポストゆとり世代なんですけど、ゆとり世代も定義が諸説あるので年代を特定しづらい。だけど、オレの体感的には1993年以降生まれですね。彼らは生まれた時から携帯電話があり、ものごころついた時からスマートデバイスを使いこなしているんじゃないかな。SNSとの関連性もあると思うけど、コミュニケーションの取り方もゆとり世代とは違うように感じます。特にいまの女子旋風と相まってUltron女子はイケイケです(笑)。
山口 その定義だとITサービス的には、デジタルネイティブのジェネレーションともいえますね。そんなUltron女子クリエイターパワーに負けない(笑)、イケてる妄想分析をお願いします。
伊藤 猫耳女23歳、職業アイドル。もともとはシンガーソングライター志望で田舎から上京して音楽系専門学校へ。卒業後はライブ、ライブ、ライブ。自分の歌をたくさんの人に聞いてもらいたくて。でもいつの間にかファン集めに必死になって、気づいたらアイドルって呼ばれちゃってた。最初は周りのアイドルに流されていたけど、そのうち彼女たちに負けたくないと思って、猫耳つけてかまってちゃん。
今夜はワンマン。開演5分前。猫耳、笑顔、アイドルモード。フロアには50人のファン。音響、照明、物販OK。明日への一歩。ブランディング、マーケティング、マネタイズ。そして今夜ももれなくタイムラインを汚すヤツ、死ね、消えろ、殺す。
山口 地下アイドルもポップカルチャーも普段は興味ないはずなのに、こういうイメージが降ってくる伊藤涼の脳みそが面白いです。
わーすた「完全なるアイドル」
iDOL Street/エイベックス 2016年9月28日発売
[CD+Blu-ray(スマプラ対応)]2,000円(税抜)
■わーすたは、三品瑠香、廣川奈々聖、松田美里、小玉梨々華、坂元葉月からなる5人組。作詞・作曲・編曲も手がけるサウンドプロデューサー・鈴木まなかの他、高田あゆみ(コレオグラファー)、木村優(衣装デザイン)、そして“もふくちゃん”こと福嶋麻衣子(クリエイティブディレクター)が、クリエイター女子として名を連ねる。
■「完全なるアイドル」作詞/鈴木まなか 作曲/鈴木まなか、Hiroki Sagawa 編曲/Hiroki Sagawa
http://wa-suta.world/
【動画サイト】
「完全なるアイドル」
https://www.youtube.com/watch?v=T0cGB7LSuf8
2016.09.13(火)
文=山口哲一、伊藤涼