音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!

 さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?

【次に流行る曲】
わーすた「完全なるアイドル」

海外進出を視野にメンバー全員が外国語を学習

伊藤 今回は、わーすたの1stシングルです。わーすたは、世界に照準を合わせたデジタルネイティブ世代アイドルで、SNSとリアルアイドル活動を通じて世界にKAWAIIジャパンアイドルカルチャーを発信すべく2015年3月結成。2016年5月にアルバム『The World Standard』でメジャーデビュー、彼女たちのグループ名“わーすた”とはThe World Standardの略称ですね。

山口 ちょっと意外な選曲です。KAWAIIカルチャー、アイドル系は伊藤さんの得意分野ではないですよね?

伊藤 そうですか? ぜんぜん嫌いじゃないですよ。むしろそこから生まれるエッジの利いた新しいもの、ファッションとカルチャーに寄り添った音楽には興味あります。今回もある意味、時代を感じさせるという視点での選曲です。彼女たちのコンセプトはThe World Standardってことでメンバーがそれぞれ英語、韓国語、中国語、フランス語などを学習していたり、国内アーティストでは珍しく、ライブイベントでスマホにて動画、写真撮影が可能、SNSでのファンによる拡散を推奨したりしています。

山口 伊藤涼命名の「Ultron(ウルトロン)世代」という文脈で興味をもったんですね?

伊藤 はい、新しいクリエイターたちという文脈です。何よりも面白いのが彼女たちのクリエイティブを作っているのが女子で、もらった資料にはメンバーのプロフィールのほかに、クリエイター女子っていうプロフィールがあるんです。サウンドプロデューサー、コレオグラファー、衣装デザイン、クリエイティブディレクターまで写真付きで紹介されている。しかも、みんなアーティストに負けないくらいビジュアルも個性的だしイケテル。

山口 そうですね。女性だけのチームということ自体は珍しくありません。ビジネスの世界でも、若くて見た目の良い女性を社長として祭りあげ、マスメディアの注目を浴びるという手法はあって、実際はオッサンが後ろで糸を引いているみたいなパターンが多いですね。でも今の時代は、SNSでユーザーたちが自分で「裏を取る」ことができてしまいますし、「でっち上げ」は見透かされる時代ですよね。このチームは、誰がコーディネートしたのか分かりませんが、そういうオトナの思惑や男の影を払拭するエネルギーを感じますし、顔ぶれに必然性を感じます。

2016.09.13(火)
文=山口哲一、伊藤涼