【BL初心者は大人気作から読め。】
何度か書いてきましたが、BLマンガの歴史はさまざまなタイプの男性の骨格や年齢、容姿などを描き分ける画力獲得の歴史でもあります。そこには彩色を施してカラー絵にするという技術も含まれ、その能力はマンガ雑誌や単行本のカバーイラストとして威力を発揮します。
シーリングされて中身の読めないマンガ本を読者にジャケ買いさせるには必須の能力で、特に新人作家の1冊目はカラーがうまいと断然有利。余談ですがPCの普及後は“イラストレーター”などのお絵描きソフトで着彩するのが主流です。
10の課題をクリアしろ! センシティヴな恋のセラピー
デジタルの特性を最大限に引き出して、フレッシュな逆光表現を描いてデビューした作家がいます。それが宝井理人さん。なんというユリイカ! 逆光のきらめきとBL、確かに萌える。続く作品のカバー絵でも逆光表現を追求し続け、遂に大人気作を生み出した作家を読んでみませんか?
『テンカウント』の主人公は、潔癖症で普段からマスクと手袋が外せない社長秘書の城谷さんとカウンセラーの黒瀬くん。ふたりは偶然出会い、城谷さんは潔癖症を克服するために個人カウンセリングを受けることになった。「1.ドアノブに触る」からはじまる10項の課題を1つずつクリアする療法を進めるうちに、彼のトラウマが明らかにされていく。次第に黒瀬くんに惹かれていく城谷さん。だが、黒瀬くんにも暗い過去があるようで……。
「9.部屋に他人が入る」のあとの10番目の課題はまだ謎のまま。その先にあるのは愛? それとも別れ? ブラインドから差す光に背を向け逆光に立つカバーは、光あるところに必ず影ありの暗喩に読めて秀逸の一言です。
『テンカウント』(既刊1~4巻) 宝井理人
カウンセラー×社長秘書。表紙には必ず受けと攻めの男子ふたりが鉄則のBL本で、ひとり表紙が許されるのは大人気の証。1巻は潔癖症の秘書・城谷さん(受)。2巻は黒髪のカウンセラー・黒瀬くん(攻)とひとりずつ交互に登場するのも眼福です。
新書館 600~630円
» この書籍を購入する(Amazonへリンク)
福田里香 (ふくだりか)
お菓子研究家。『まんがキッチン おかわり』(太田出版)と文庫版『まんがキッチン』(文春文庫)が好評発売中。
Column
BLマンガ基礎講座
BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!
2016.07.05(火)
文=福田里香