【BLの年下ワンコ攻めは鉄板である。】

 BLの始祖的な作品、つまり70年代少女マンガの少年愛を描いた名作群や耽美・やおいと呼ばれたマンガと小説の混合雑誌「JUNE」は、年上(攻)×年下(受)が主流で同級生同士もあるというバランスでした。80年代にそれを「攻は断然年下。しかも受に忠誠を誓ったワンコ的性格で見た目ももふもふしたくなる大型犬」と覆したのが、コミケを発表の場とする同人作家でした。強力に布教したのはマンガ描きと小説書きの2人組「えみくり」。年下攻めのカップルを魅力的なオリジナル作品として描き、人気作家として名を馳せました。

 個人的な見解ですが、やおいがBLへと変容した時期は年下攻めの隆盛とシンクロしていたと思います。あれから30年。若いBL読みに「年下ワンコ攻め」と言っても「なにそれ鉄板やん」と流されるでしょう。

 今やド定番化したこのカップリングに新たな傑作が生まれました。ZAKKさんの『CANIS』シリーズです。

雨の日に仔犬を拾ったら? 恋に落ちるしかないのだ!

 若き帽子職人の沓名(29)には、幼い頃雨の日に仔犬を拾い、その犬と一緒に育った思い出があった。スランプに陥っていたある雨の日、道端に落ちていたリョウ(19)をつい拾ってしまう。行きがかり上、沓名の帽子店を手伝うことになったリョウにはNYマフィアの一員という秘密があった。一方、沓名はNYでショーを開催することになる。本国でリョウを待ち構えていたのは意外な真実だった。

 確かなデッサンとセンスの良さで帽子はもちろん登場人物がすべてファッション誌のように美しい。クリエイションについて深く考察する仕事マンガとしても読める。連作でデビューってすごい。

『CANIS』シリーズ(既刊3冊) ZAKK

CANISは「犬」のラテン語。精神的に分類するとヒト亜科イヌ属の人間が存在するのでは? という問いかけから誕生した物語。ワンコ属性のリョウと犬好き沓名の魂のふれあいを描く。#2後はリョウのボスたちのNY時代を描いてよりノアールな展開に。
茜新社 680円
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Column

BLマンガ基礎講座

BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!

2016.05.04(水)
文=福田里香

CREA 2016年5月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

人生に大事なもの3つ。

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