【BLは“ゆうきまさみ”から入れ!?】
今回ご紹介する『でぃす×こみ』はBLマンガではなく、BLマンガ家を主人公にしたコメディです。マンガ家マンガは昨今の流行ですが、この作品のユニークな点は作者がまさかのゆうきまさみ先生ということです。ゆうき先生といえば、1980年代から活躍する小学館系少年マンガの看板作家で御年58歳の男性だ。代表作は『究極超人あ~る』『機動警察パトレイバー』などメジャーかつコアファンも多い作風で男性のみならず女性にも人気。昔から大ファンというCREA読者も少なくないはずです。
そんなゆうき先生が描くBLマンガ家マンガは、BL初心者にも“敷居が低い”。提案ですが、ゆうきマンガをBLの入り口にしませんか?
うちの兄貴はBLの天才だ! ゴースト作家コメディの快作
物語は少年マンガ家志望の女子高生・渡瀬かおるが少女マンガ部門で新人賞の大賞をBLマンガで取ったところからはじまる。
じつはこれ、就活に行き詰まった大学生の兄・弦太郎が息抜きに描いて、かおる名義で投稿した作品だった。編集部に言い出せずにいたら、そのままデビューしてしまい、かおると弦太郎は二人三脚でマンガを描く羽目に。毎回巻頭のカラーページはふたりが描くBLマンガの出だしに当てられ、従兄弟同士、愚王×賢臣、委員長×帰宅部員などカップリングもあえてBLのステレオタイプを揃えて“魅せる”構成が秀逸。
だけど茶化すばかりじゃないのがゆうき先生の天才性だ。BLの本質を捉えた弦太郎のセリフが胸に沁みます。〈ジャンルなんてなんだっていいんだよ。俺はただ─なんかこう─セツなくも美しい物語を描きたかっただけなんだ。〉……私もそれが読みたいだけなんです!
『でぃす×こみ』(既刊1巻) ゆうきまさみ
期せずしてBLマンガ家デビューしてしまった兄妹の運命やいかに? 毎回巻頭に付くゆうきまさみ画のカラーBLマンガがまず眼福。着色を灰原薬、黒丸、室井大資、のりつけ雅春、オノ・ナツメと豪華マンガ家陣が担当しているのもナイス。
小学館 630円
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福田里香 (ふくだりか)
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Column
BLマンガ基礎講座
BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!
2016.04.04(月)
文=福田里香