【BLはレーベルで読め。】

 90年代頃に、今でもマンガを読んでると言うと「『フィール・ヤング』(以下フィーヤン)とか好きでしょ?」と言われがちだった。さもありなん。対象読者を20代以上としたフィーヤンにはおしゃれな画風のマンガ家が揃い、大人の女性のリアルで本音な恋愛を描いた作品群は圧巻だったから。フィーヤンの版元は祥伝社。編集を請け負うシュークリームは、同誌の大成功で女性向けマンガに特化し、世に出した作品は今や1000作以上という凄腕の編プロです。そしてフィーヤンは現在もこの路線で名作を生み続けているのはご存じのとおりだ。

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 しかし当時は他人にフィーヤン好きでしょ? と問われても「客観的に凄いと思うけど、わたし、本音で修羅場る辛く現実的な男女の恋愛マンガはツボじゃない。マンガに求めるのは癒しと萌え。だからBL系を読んでてコミケも行きます」という嗜好をうまく吐露できずに困惑した。

 そんなわけでBLの対極はフィーヤン(祥伝社&シュークリームコンビ)だと長年認識していたんですが、歴史は動くね。なんと2010年代に入って祥伝社&シュークリームコンビがBLマンガのレーベル「on BLUE」を創出したのだ。女子向けマンガにこだわって編集してきた歴史を思えば、BLがないのはむしろ不自然。BLこそ女子マンガだ。一周回ってBLはあって当然という時代になったのね。

 「on BLUE」はフィーヤン創刊時を彷彿とさせる勢いで、若い世代の作家と幅広い作風を揃え、実験的なことにもチャレンジしていてBL入門雑誌として最適です。まずはレーベル買いして、運命のBLマンガに開眼しませんか?

「on BLUE」 vol.20

前号はヤマシタトモコの10周年特集と、巻頭特集はいつも永久保存級。vol.20は紗久楽さわ、のばらあいこ、松本ミーコハウス、紀伊カンナ、たなと、彩景でりこ、カシオ、黒娜さかきetc.……総勢15名の豪華執筆陣。お気に入りが見つかるはず。
祥伝社 907円
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福田里香 (ふくだりか)
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Column

BLマンガ基礎講座

BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!

2016.02.04(木)
文=福田里香

CREA 2016年2月号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

この記事の掲載号

大人の少年少女文学

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定価780円