【BLは看板作品から入るべし。】
看板作品を持つマンガ誌は強い。なぜなら、支持するマンガの掲載号を必ず買うのがファンですから。そして、他の掲載作も読む→好きな作家をまた見つける……という読書循環が、ひいては次世代の才能の出現を促すのだと思います。だから、BLマンガ界で長年この循環を支える大看板を背負った作品は、間違いなくおもしろい。まずはそこから入門しませんか?
このレジェンドを読め! 世界が認めた俳優カップル
BLの大看板といえば、新田祐克さんの『春を抱いていた(以下、春抱き)』を置いて他にないでしょう。春抱きはそれくらい、レジェンド。人気AV男優でライバルの岩城京介(先輩・27)と香藤洋二(後輩・22)に、ホモセクシャルを題材にした映画のオファーが来た。AV界から抜けるための未来を賭けたオーディションは、ふたりでベッドシーンを演じることだった。ノンケのふたりの大問題はどっちが抱くか?ということ。ベッド上でのプライドをかけた攻防戦は、やがて彼らの内面をもさらけ出していく。
掲載誌「b-BOY Zips」の編集方針は、毎号丸ごとお題で縛る特集主義でしかも全作読み切りだ。なんと新田さんは1997年、本誌3号「攻×攻特集」のお題で描いた短篇・春抱きの好評を受け、そのまま「SM」「べたぼれ」などと毎号お題をこなしつつ、1話完結を繫いで14巻にも渡る大長篇を描き上げる。なんという作話能力! 連載になった2話以降は、岩城さんと香藤の恋愛を軸に俳優としての成長を描いています。そして全世界公認で、人気俳優のまま同棲へ、さらに結婚もします。読者がこの日本に住みたいと憧れる、ピースフルな未来が具体的に描かれた作品です。
『春を抱いていた』(全14巻) 新田祐克
人気AV男優の岩城と香藤が、真の俳優になるために恋愛と仕事に大奮戦。攻と受がリバーシブルになるカップリングの先駆けとしても評価が高い。前世篇『冬の蝉』は号泣確実。現在は待望の新シリーズ『春を抱いていた ALIVE』を連載中。
ビブロス 571~619円
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福田里香 (ふくだりか)
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Column
BLマンガ基礎講座
BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!
2015.10.05(月)
文=福田里香