【BLは進化する。】
BLに興味があっても、手に取るきっかけが摑めないひとって案外多いと思います。紙媒体に電子書籍と発行点数も多く、そこそこ歴史もあるので、つい選び倦ねるというか。しかも、特にゼロ年代以降のBLの多様化には目を見張るものがあります。ならば、局部的に個々の作品を選ぶのではなく、いっそ大局を見たほうがいい。まずはBLの成り立ちから現在までをわかりやすく分析した評論本を読破してみませんか? 急がば回れとよく言いますが、そっちのほうが良作に巡り合う早道かもしれませんよ。
知られざる歴史と本質に迫る「快楽装置=BL」の画期的評論
うってつけの評論本が最近出ました。溝口彰子さんの『BL進化論』です。溝口さんはレズビアンとしてコミュニティ活動も展開し、映画、アート、クィア領域研究倫理などの分野でも論文を書く研究者。彼女は本書の中で、近年のBLが現実の日本社会に存在するホモフォビアや異性愛規範、ミソジニーを克服するための手がかりを与えてくれる作品を生み出していると説いています。
ジャンル初期にはマイノリティに配慮が足りない表現が散見されたのも事実。しかし、作り手、読み手双方があくまで創作の楽しみを保持しつつ(これ大切)世代を継いでいくことで、次第に批判点が修正されていき、ジャンルが成長した結果、現在では多くの作品で現実よりもゲイ・フレンドリーな世界観や、女性性のあり方を問うような進化した内容になったとも述べています。
BLは進化している。それはまさに私が漠然と体感していたことで、ついに言語化したひとが出現した!と大いに我が意を得ました。LGBTI関連に興味のあるひとにもおすすめの一冊。
『BL進化論 ボーイズラブが社会を動かす』 溝口彰子
なぜBLを読むのか? 森茉莉の小説を一応の起源とし、BLの祖先にあたる70年代の美少年マンガや、80~90年代の同人誌カルチャーにも言及。やおいから商業BLへ至る過程、ゼロ年代以降の劇的な進化を丁寧に分析、評論した新しい教科書。
太田出版 2,700円
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福田里香 (ふくだりか)
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Column
BLマンガ基礎講座
BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!
2015.09.04(金)
文=福田里香