【BLはカップリングの宝石箱である。】
男子向けラブコメマンガの構造を回転寿司に例え「ネタ=美人がベルトコンベアで回ってきて、主人公の前に据え膳。それを次々に喰い、最後に本命を喰ったら最終回」と分析したのは、名著『サルでも描けるマンガ教室』(相原コージ・竹熊健太郎)。慧眼です。
それに比べ、ラブコメ少女マンガは、彦摩呂のグルメレポート風に言えば「カップリングの宝石箱や~!」的構造です。一般的に女子は男子ほど主人公のハーレム展開願望がなく、当て馬は1~2名で充分。主人公が本命とくっついたら、今度はライバル、当て馬、親友もぴったりの相手と幸福になる展開が読みたいのだ。結果、10巻くらいで大抵タイプ違いのラブラブカップルが数組誕生しています。
恋をした男の子は人外!? 紙様と人間の恋が満載
BLも少女マンガの一種。長篇は必ずカップリングの宝石箱展開になるので、楽しく読めます。
おすすめ作家の筆頭は、志水ゆきさん。デビュー21年目の人気作家なのに、単行本のタイトルがたった4点なのはカップリングの種類を読ませる腕が天才的で、長篇に特化しているから。初単行本なのに異例の長篇『LOVE MODE』11巻、唯一の1巻もの『レシピ』、最新長篇『花鳥風月』もすべて宝石箱展開。
代表作は『是-ZE-』。主人公の雷蔵は、豪邸の住み込みハウスキーパー。無愛想な住人・紺くんに恋をした。しかし、紺は人間ではなく“紙”様だったのだ。雷蔵×紺の他に、問題を抱えた紙様と言霊師・三刀家の人間が続々登場。メガネ男子×女王様、男気中年×童顔青年、強面社長×薄幸青年、双子×ツンデレ……うわ、眩しい! BLを読むのは、きらめく宝石箱を覗いて愛でる行為とイコールだ。
『是-ZE-』(全11巻) 志水ゆき
ワケありの美形がひしめく屋敷で、普通の人間・雷蔵が遭遇したのは、言霊師と紙様たち。切ない生い立ちを持つ者たちが、結ばれていく過程を堪能する群像劇。カップリングはよりどりみどりで総勢8組。絶対推しカップルが見つかります。
新書館 各552~571円
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福田里香 (ふくだりか)
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Column
BLマンガ基礎講座
BLはボーイズラブの略。ざっくり定義を述べると「主に女性の読者に向けて描かれた男同士の恋愛をテーマにした作品」。実は名作が満載のこのジャンル、食わず嫌いはもったいない!
2015.06.03(水)
文=福田里香