国際都市東京に誕生した日本旅館の磁力
星のや東京を彩る日本の佳いもの。それは宿泊客とスタッフが気持ちを通わせるための鍵にもなると、菊池さんは考えている。
「よく私達の旅館とホテルとのサービスの違いを問われるんですが……。考えてみると、旅館といえば女将さん、仲居さん、と言うように、人を指しているんだなって。だから、その人をどう機能させるか、ということが旅館とホテルの違いになっていくのだと。星野リゾートではサービスを主従ではなく、お茶の世界の亭主と客の関係である、と捉えているんですね。その関係を築くためには『繋ぐためのモノ』の準備が必要になってくる。それは、お客様の関心を集め、会話の切っ掛けになるようなモノです。『人とモノがあって、コトができる』と、私は思っています」
そのため、とくに東京では佳いものの充実に力が注がれた。また、インテリアやサービスでは歳時記を細やかに取り入れる。お茶の間ラウンジで供されるお茶や和菓子も、その一時を見極めて厳選されたものだ。ラウンジに並ぶ本のセレクトは人気の書店、かもめブックスに依頼。本のラインナップは季節や時間などに応じて、次々と換えられていく。そして、そのすべてのモノ、コトに対応できるよう、スタッフはトレーニングを積み重ねているという。
ジャージーで仕立てられた着物の滞在着も話題を集めている。京都の着物デザイナー、斉藤上太郎さんがデザインしたもので、着付けは簡単、着映えも着心地も良い。これに京都の老舗履き物専門店、祇園ない藤のオリジナルであるモダンな草履型ビーチサンダルを合わせ、外出することもできる。
右:草履型ビーチサンダルは、驚くほど履き心地がよく、歩きやすい。
「星のや東京は星野リゾートにとってチャレンジです。私としては東京で全84室の旅館を成功させ、日本人のお客様にも外国人のお客様にもご評価いただけるように、これからも努力していきたいですね。そのうえで、旅館というカテゴリーを確立したい。今後、東京でも『宿泊は旅館にする? ホテルにする?』と言われるようになれば良いなと思っています」
星野リゾートが首都東京に創造した新しい旅館は、日本の素晴らしさを世界に向けて発信し始めた。心かき立てる「もう一つの日本」を、いち早く訪れてみたい。
[特集中] 東京の中心に天然温泉を備える日本旅館「星のや東京」徹底解剖
京都の名工がつくりあげた庭を抜け、樹齢300年の青森ヒバの扉を開けると広がる、畳廊下に格天井を掲げた厳かな空間。安らぎと機能性を兼ね備えた客室、宿泊客専用「お茶の間ラウンジ」、最上階の天然温泉からレストランまで、「星のや東京」を知り尽くせる。
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[インタビュー1] 東京のど真ん中に出現した日本旅館「星のや東京」もてなしの新たな流儀
星のや東京の玄関に現れた菊池さんは、淡い色合いの着物に“星のや”の紋が入った半纏を羽織り、凛として温かな「女将」の風情さえ漂わせる。総支配人の話は時をさかのぼり、星野リゾートの原点である軽井沢から始まった。
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星のや東京
所在地 東京都千代田区大手町1-9-1
電話番号 0570-073-066(星のや総合予約)
客室 全84室
チェックイン/アウト 15:00/12:00
料金 1泊1室 78,000円~(税・サ10%込、食事別)
交通 地下鉄大手町駅より徒歩2分
URL http://hoshinoyatokyo.com/
星のやURL http://hoshinoya.com/
2016.08.03(水)
文=上保雅美
撮影=佐藤亘