【WOMAN】
ときに慈悲深く、ときに残酷
それを知っても、子は母を想う
生き別れの母というのは、そばにいる母より恋しいものなのか、記憶をなくした少年は、甲斐甲斐しく世話をしてくれる母親になじめない。ある日、その母の正体を知った。水底に沈んでいた懸守から蓮王丸という名前を取り戻した。それを機に蓮王丸は、顔もおぼろで生きているかどうかもわからない“面影の中の母”の消息を尋ねていく。
蓮王丸は、旅の途中で「自分がおまえの母だ」とすり寄ってくるさまざまな異形の存在に遭う。母に化けたニセの母たちは見た目は優しげだが、彼はほどなく、それらが“化物”であることを見抜き、〈偽物の母上はいらないんだっ〉と切り捨てる。蓮王丸が求めているのは本物の母。けれど、その本物の母にも実は鬼のような一面があって……。
母ならではの慈悲深さやエゴに、本物/偽物の違いなどありはしない。だが、母性の業の深さを知ってもなお、息子というのは変わらず、母の夢を見たがるマザコンらしい。
『月影の御母』(全1巻) 近藤ようこ
自分の名前も、昨日の出来事も思い出せなかった少年(蓮王丸)は、かすかな望みを胸に、自分になつく不思議な子猿・ひょん太を連れて、産みの母を探す旅に出るが……。我が子に未練を残して死んだ母、母になれなかった女──母であることはかくも幸福で、同時に不遇だ。
KADOKAWA 860円
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Column
男と女のマンガ道
男と女の間には、深くて暗い川のごとき断絶が横たわる。その距離を埋めるための最高のツールが、実はマンガ。話題のマンガを読んで、互いを理解しよう!
2016.04.05(火)
文=三浦天紗子