結果だけでなく、そこに至る物語を見逃さなかった「たくろう」への言葉
さて、M-1を語る上で、「物語」との付き合い方は避けて通れない。M-1はある時期から、漫才師たちの歩みや背景を強く前面に押し出してきた。努力、苦節、挫折、再起、そして涙――。定型的でわかりやすいプロットは大会を盛り上げる一方で、漫才師を消費するメディアのサイクルを加速させている側面も否めない。物語に魅了された私たちは、新しい物語、新しい主人公、新しい敗者を次々と求め続けてしまう。
駒場もまた、審査のなかで漫才師の物語に触れる機会が多かった。感覚的な言葉と分析的な言葉の対比でいえば、物語は前者に近いだろう。
ただし、駒場のコメントは物語の確認にとどまらない。象徴的なのが、優勝したたくろうへの講評だ。
たくろうは、結成2年目でM-1準決勝に進出するなど、早くから注目されてきたコンビである。しかし、その後は準決勝にすら届かない時期が長く続いた。では、なぜ今回大きく躍進したのか。駒場はその理由を的確に言語化している。
「(たくろうは)だいぶ前に準決勝とか上がって、そっからなかなか、いつでも(決勝に)上がるやろうって言われてたのに上がれずに、7年ぐらいずっとしんどい思いしてたときもずっと作ってて、その間も赤木くんのおどおどした挙動不審なキャラクターの漫才はあったんですけど、今回のは挙動不審にさせられてるから、挙動不審になる意味があったと思うんです。今までも挙動不審ではあったんですけど、勝手に挙動不審になってた」
今回のたくろうの1本目のネタは、リングアナを一緒にやりたいというツッコミ役・きむらバンドのフリによって、ボケ役の赤木裕が追い込まれ挙動不審に陥る構造がとられていた。しかし、以前の彼らのネタは逆だった。きむらに対し、赤木が一方的におどおどと働きかける形が多かった。駒場はこの点をふまえ、赤木は以前から挙動不審なキャラクターではあったが、今回は挙動不審に陥る必然性がネタの構造に組み込まれていたと指摘する。赤木が挙動不審になる理由が観客に共有されたからこそ、笑いが爆発したのだ、と。
その上で、駒場はコメントを次の言葉で締めくくった。
「やってたからこそ、いいのが出たなっていう。7年間やってたからこそっていうのは思いました」
