Aさんは青ざめて足早に……
「あ、ちょっと待って!」
慌てて立ち上がったAさんの制止も虚しくカーテンがさっと開かれると、ゴミ袋が積み上げられたベランダが露わになりました。
「わ、きったな~。ゴミくらい捨てなよ~」
ドッと起こる笑い声。しかし、Kさんの首には冷や汗が一筋垂れました。
なんだあのゴミの山。こんなに足の踏み場のないベランダじゃ人が立てるわけないじゃん……――黙りこくっているとAさんが「どうしたの?」と声をかけてきたそうです。
「あ、あの、さっき外から見たらベランダに誰か立ってて……というか、隣の部屋のベランダにも人が立ってたんですよ……」
みるみるうちに青ざめていくAさん。彼はベランダに飛び出すや、ゴミ袋をかき分けるようにして隣の防火壁の向こうを覗き込みました。
「お、おい、なにしてんだよ」
「どうかしたの?」
ガサガサと音を立てながら部屋に戻ってきたAさんは、周りの様子など気にせずKさんを見つめたまま言いました。
「……いないぞ」
「でも、マジでさっきいたんですよ……」
わずかな沈黙。
突然、Aさんは文句のような声を小さく発すると、スマホと上着を掴んで足早に玄関から外に出ていってしまいました。
騒然とする一同。
しかし、数分経ってもAさんは戻ってきませんでした。










