TBS火曜ドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」は、プロポーズ直後に別れてしまった山岸鮎美(夏帆)と亭主関白思考な海老原勝男(竹内涼真)が、「料理を作る」というきっかけを通じて、“当たり前”と思っていたものを見つめ直し成長していく、2人の成長&再生ロマンスコメディ。

 今夜がいよいよ最終回。暮らしと食をテーマに執筆されているフードライターで、コラムニストの白央篤司さんに、ドラマを通して考えた、他者と暮らすための“生活目線”について書いていただきました。


父→息子に連鎖する「彩りが悪いな……」

 ドラマ「じゃあ、あんたが作ってみろよ」は毎回本当に気づきが多くて、「なるほどねえ……」なんてテレビに向かってひとりつぶやいてしまう。誰かのイラッと来るような言動→周囲の受け止め方もいろいろ→イラッとさせる人はなぜそういうことをしてしまうのか、という描き方の流れと構成が見やすく、人間を単純に善悪ですぐ片づけていかない、作り手の奥深さや慎重さといったものにも感じ入る。

 第7話では勝男の回想シーンがそうだった。勝男はまだ小学生ぐらい、夕飯どきの食卓にはごはんと味噌汁、そしてさばの味噌煮が人数分並び、大皿には切り干し大根煮と、かぼちゃ&きのこ(だと思う)の天ぷらが盛られている。勝男の家は5人家族、それも育ちざかりの男子が3人だ。米研いで材料を刻むだけでも疲れそう、洗い物の数も半端ないわー……なんて思っていたら、父親(菅原大吉)は開口一番、「彩りが悪いな……」と不機嫌そうにのたまうのだった。

 まさに「じゃあ、お前が作ってみろよ」と言いたくなるわけだけれど、妻は「気をつけますね」と即答。こんな態度に慣れてるんだろうな、と悲しくなる。「さばに添えてあるゆで青菜で充分だよ……」なんて思っていたら、ここで話は現代に戻り、勝男の兄は「母親の料理に採点するおやじがいやで、反面教師にしてた」的なことを言い、勝男は「俺は知らないうち、父親の真似をしていたのかも……」と考え出す。

 そう、最初のほうの回では勝男も「彩りをもうちょっと考えない?」的なダメ出しを、彼女の料理にしていたのだった。たしか原作だと「煮た味つけのものが多いから、ここに酢の物ひとつ入れるとさらにいいんじゃないかな?」的なダメ出しもしていたような。うーーーーーん、料理もできないのに勝男ってば食事にケチつける才能抜群だなと妙に感心してしまう。「そのとおりだから余計に腹が立ち」なんて川柳があったけれど、料理好きを確実に腹立たしくさせる言葉というか。私だったら言われた瞬間、出してるおかずに酢をかけてしまうかもしれない(笑)。

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