錦織一清さんにかけてもらった言葉が俳優人生を変えた

――先ほど舞台は「生もの」だとおっしゃっていましたが、コンディションが良い日も悪い日も、本番はやってきますよね。モチベーションを保つためにされていることなどはありますか?

 何もしてない(笑)。どうあがいても、決められた時間に幕は上がるので。逃げたくなるときもありますが、お客さんを前にしたら言い訳がつかない。だから、モチベーションを保つというより、「やるしかない!」って気持ちが大きいですね。だって、お金を払ってわざわざ足を運んでくださっているんですもん。

 体調が悪かろうが、熱が出ようが、それでもベストを尽くしてきた先輩方の背中をずっと見てきたことが、自分にとって大きな糧になっている気がします。だから弱音なんて吐いてられないですよね。

――先輩方から大きな影響を受けていらっしゃるんですね。これまで先輩方からかけてもらった言葉のなかで、特に印象に残っているものはありますか?

 ここでは話しきれないくらい、たくさんあります。舞台に関することでいうならば、錦織一清さんに言われた言葉に人生を変えてもらえたと思っています。

――それはどんな言葉だったんでしょう?

 まだ右も左もわからないくらい若い頃に、舞台に立たせてもらったことがあって。自分たちのアドリブにお客さんがどう反応してくれるか、それをつい意識しすぎちゃっていたんですよね。

 それを見ていた錦織さんが「お前なぁ、どういう方が観にきてくれているかわかるか? リアクションをしてくれるのはきっと何度もきてくれているリピーターでとてもありがたいけど、この日のために一生懸命バイトをしてお金を貯めてやっとの思いでチケットを買ってくれた人だっているんだぞ。そういった方のことを考えたことがあるか?」って注意してくれたんです。

 それから、一切アドリブをしないと決意しました。錦織さんのこの言葉が、自分のスタンスを大きく変えてくれましたね。

 決められたことを決められたクオリティで保ち続けるのは簡単じゃない。でもやりがいがあるし、それをやりぬくのがプロなのかなって思ってます。

北山宏光(きたやま・ひろみつ)

2023年9月にTOBEとともに新しいエンターテイメントに挑戦していくことを発表。23年11月17日にデジタルシングル「乱心-RANSHIN-」でソロデビュー。楽曲制作やライブの演出も手掛けるほか、俳優活動など幅広く活躍している。25年6月16日には2nd Album「波紋-HAMON-」をリリースし、全国11都市を巡るライブツアー「HIROMITSU KITAYAMA LIVE TOUR 2025「波紋-HAMON-」を開催。25年9月ブルガリア共和国友好親善大使に就任。

舞台『醉いどれ天使』

原作:黒澤明 植草圭之介
脚本:蓬莱竜太 演出:深作健太
出演:北山宏光
渡辺大、横山由依・岡田結実(Wキャスト)/佐藤仁美、大鶴義丹
東京公演:2025年11月7日(金)~23日(日)明治座
※名古屋公演、大阪公演もあり
https://www.yoidoretenshi-stage.jp/

STORY
戦後の日本。闇市の顔役である松永が真田の診療所を訪れる。一目見て肺病だと判断した真田は治療を進めるが、松永はいうことを聞かない。そんな中、兄気分の岡田が出所し、闇の世界の力関係に変化が起きていく。

衣裳協力

ジャケット 96,800円、パンツ 59,400円/MAHITO MOTOYOSHI(JOYEUX 03-4361-4464)