私はネコのおかげで、ラジオリスナーから子育てに関するメッセージが届いた時に、心を添わせ、共感できるようになった。「兄弟で遊んでくれると楽」「上の子は頼りになる、下の子はわがままでもかわいい」「女の子は大人びていて、おやつだけでは操れない」「男の子は腕白で、走り回って目が離せない」など、ネコにも当てはまることは多く、私は思わず「わかる~」と唸ってしまう。
もちろん、夫と一緒に命を守り育てる、その経験もネコたちが与えてくれている。
ネコたちを見て一緒に笑ったり、一緒に心配したりと、夫婦をより“チーム”にしてくれる。
「1週間持たないかもしれない」突然、長女ネコ・さとみがダウン→腎臓病が発覚して…
そして教えてくれるのは、子育ての心だけではない。「愛する存在」や「命」と向き合った時、人としてどうありたいのか、自らに問う機会をくれるのだ。
私が50歳の年、11月下旬のことだった。だいぶ歳をとってきたかな、食べる量も減って痩せてしまったな、と思っていたさとみが突然、ダウンした。
台所の隅にうずくまり、夜いつものように一緒にベッドに寝に来ない。これはおかしい、と翌日すぐに動物病院へ。
腎臓と貧血関連の数値が、驚くほど悪かった。ネコは老いると大半が腎臓病になるのは知ってはいたが、まさかこんなに急にダウンするとは。さとみは、きっとギリギリまで我慢していたのだ。獣医師の言葉の端々から、1週間持たないかもしれないという雰囲気を感じとった。ショックだった。
飼う前から覚悟していたつもりだった。ネコの寿命は短く、お別れが必ず来ること。
どんな命も有限であること。しかし、頭ではわかっていても、心がまったく付いてこない。お別れをする自信がなかった。悲しくて、淋しくて、絶望した。
「お別れの時が来るまで、全身全霊で介護することを誓った」
さとちゃんとは結婚する前から一緒に暮らしていたので、二人だけの思い出もいっぱいだった。共に過ごしてきた15年のことに思いを馳せると、涙が止まらない。でも、一旦泣き崩れてしまうと、立ち上がれなくなってしまう。最初はとにかく泣くのを我慢し、あえてテキパキと体を動かした。
それに、すでに後悔していた。本当に細かいことまで。
「さとちゃんが膝に乗ろうとしたあの時、疲れていると振り払ってしまった」
「ご飯を残していたあの時、時間がないと放置してしまった」
なぜもっと構ってあげなかったのだろう。一緒に過ごせる時間は限られているのに、どうしてもっと大切にしなかったのだろう。
もう、後悔したくない。さとちゃんがいなくなってから、自分が許せなくなる。これ以上後悔しないために、やれることはすべてやろう、と思った。さとちゃんとのお別れの時が来るまで、全身全霊で介護することを誓った。
〈「私の肉体は介護疲れでボロボロだった」15年連れ添った愛猫に“腎臓病”発覚→8か月の介護生活…元NHKアナ・住吉美紀(52)が明かした“愛するネコの最期”〉へ続く

50歳の棚卸し
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