生きづらさに悩む若者たちに伝えたいこと
――これまで最果さんの詩は、10代、20代の若者たちにも熱烈に支持されてきました。自分のさまざまな感情に押しつぶされて生きづらさに悩む若い人たちに対して、どんなメッセージを送りますか?
最果 それぞれ個別の事情があるので、全体的に言うことは難しいのですが……。私自身、10代の頃すごく考えすぎる子供で、いろんなことを敏感に感じ取っては、自分の感情だけで世界に向き合おうとしていました。それは決して悪いことじゃないけれど、とても疲れることでもありました。世の中の一つひとつに対して怒ったり、悲しんだりしていたから……。
その時に私はインターネットの日記サイトに出会うことができて、自分の感情や考えを言葉にしようとすることで、渦巻いていた感情と別の距離を取ることができたんです。
今のような、自分の言葉の一挙手一投足が全部コミュニケーションになってしまうSNSだと、また少し違うのかなとも思います。世界とうっすら繋がっているけれど、でも一人きりでもあって、インターネットの中で独り言を言って、それで感情や考えがログとして残っていくのは、当時の私にとってとてもちょうどよかった。世界に必死で抗っていないと、消えてしまいそうだった自分が、小さいけれどそれでも消えることのない言葉のかけらに変わっていくんだと知ることができたから。
だから、どこかで、自分の言葉を自分一人で残す時間が持てたら、何かが変わる人もいるのかなあと思います。
――確かに、感情を溜め込みすぎず、言葉で外に取り出すようなプロセスは、大きな助けになりそうですね。
最果 星は、私にとっていろんな感情を包みこむ光です。星の本を作るとき、そこには愛のこと、孤独のこと、言葉のこと、信じること、悲しみのこと、色んなものが星の光のように本の中に灯っていて、それこそ、星空を作っていくようにこの本を書くことができました。それは星空を見上げた時に感じた、空の大きさそのものを思い出すような感覚でした。
私にとって星空のような本が、誰かにとってもそうなったら素敵だなと思います。一冊の星空を本棚にさすようなつもりで、手にとってもらえたら嬉しいです。

<INFORMATION>
最果タヒ×プラネタリウム『詩のプラネタリウム』
【日時】2025年10月3日(金) ~11月3日(月・祝)
【上映館】コニカミノルタプラネタリウム天空 in 東京スカイツリータウン
【詳細】 https://planetarium.konicaminolta.jp/program/poems?rl=250807_tosh_poems

2025.10.17(金)
文=最果タヒ