2_老舗和菓子店が紡ぐ 昔からの大阪名物「とん蝶」ふるさとの味
大阪が誇るたくさんの名物、中でも代表的なのがたこ焼きや串カツ、いか焼きなど。目にも楽しく、香ばしい匂いに誘われる、粉もの文化。しかし、地元の人々に長く愛されてきた、“知る人ぞ知る”名物も存在します。
そのひとつが、大阪・鶴見区にある老舗和菓子店「御菓子司 絹笠(きぬがさ)」の看板商品「とん蝶」です。
創業150年の歴史と「とん蝶」の誕生
「御菓子司 絹笠」は、1867年に神戸・元町で「松花堂」として創業しました。時代の波に翻弄され、戦時中の統制下で一度は廃業。しかし、1948年に大阪・旭区で和生菓子の店として復活を遂げ、1987年には鶴見区へ工場を移転。2004年には直営店「鶴見店」を開き、地域に根ざす和菓子店としての地位を確立しました。
この店の名物「とん蝶」は、創業者の岡本大三さんが和菓子業界で差別化を図ろうと考案した一品です。特徴はなんといっても“甘くない和菓子”ということ。もち米や大豆、塩昆布といった材料から生まれるのは、どこか懐かしい味わい。郷愁を誘う素朴さと、手仕事の温もりが、訪れる人々の心をやさしく包みます。
もちもち食感と職人の手仕事
「とん蝶」という名前は、「とんぼ」と「蝶々」から来ています。記憶の中にある、ふるさとを思い出してほしい──そんな願いが込められています。開発当時からのレシピを守り続けて50年以上。白蒸しの基本形に加え、季節限定のバリエーションもあります。
10月から1月まで登場する「黒豆とん蝶」は、通常の大豆を黒豆に置き換えたおこわで、色味がほんのり赤飯のようになり、見た目にも華やか。また、阪神百貨店限定の「とうもろこしとん蝶」は、外国人観光客やリピーターに人気です。
個別包装で旅のおともや差し入れにも最適
「とん蝶」は、竹皮を模したアルミ加工の包装に入っているため、芝居の幕間や電車の中でも気軽に食べられます。一つでごはん二膳分ほどの量があり、食べ応えも十分。軽い駅弁代わりとしても楽しめるのが魅力です。個別包装のため、ちょっとした差し入れや手土産にも重宝します。
本店に加え、大阪市内の百貨店や新大阪駅構内の売店でも購入可能。大阪にしかない、どこか懐かしい味を、旅先で楽しむこともできます。
大阪に行ったら、ぜひ足を運んでほしい「御菓子司 絹笠」。老舗ならではの技と歴史が息づく「とん蝶」は、甘くない和菓子という一見シンプルな存在ですが、もちもちのおこわ、塩昆布の旨み、小梅の食感が織りなす絶妙なハーモニー......口にするだけでほっと心が和み、大阪のふるさとを感じさせてくれる体験そのものです。
「とん蝶」を通して、親子代々のファンを増やしながら、次世代へと受け継がれる味を守り続けてきた「御菓子司 絹笠」は、地域のイベントや祭りに積極的に参加し、地元とのつながりを大切にしているそう。地元食材を活かした新商品開発にも力を注ぎ、時代とともに進化する和菓子文化を支えています。
御菓子司 絹笠 本店
住所:大阪市鶴見区今津北3丁目1番8号
営業時間:9:00-15:00 ※日曜日は14:00まで
定休日:なし
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