昼のタンタラスからの絶景ビュー。ダイヤモンドヘッドを中心にホノルル全景がばっちり見られる眺望。

 新しいことがはじまる時というのは、その場所の歴史を知る時にもなります。2015年夏にタンタラスの丘でスタートしたルアウショー(ハワイ伝統の宴)、「The Big Kahuna Luau(ザ・ビッグ・カフナ・ルアウ)」の噂を聞くにつけ、どうしても思い出せないことがありました。それは、いままでその場所にはなにがあったのだろう? ということ。

 「The Big Kahuna Luau」が行われるのは、タンタラスの丘として有名なラウンドトップ・ドライブにある「Puu Ualakaa State Park(プウ・ウラカア州立公園)」。朝7時から夜9時までのゲートオープンの間に、ホノルルの全景を見に行ったことは、仕事での撮影を含め数えきれないほど!

 なのに、あの山の上の公園のどこにルアウをする場所があるのかしら? と、何度考えてもわからない……。思考のブラックホールに落ち込んでしまったのですが、今回、行ってみてびっくり! いつも道なりに展望台に行っていた通りの横に、実は「The Honolulu Ridge Estate」という、ハワイ州が管理する広大な土地があったのです。

ホノルル空港を望むパノラマサンセット。

 1922年、アーネスト・ヴァン・タッセル氏が山の丘陵にあるこの場所に目をつけ、ハワイアン・マカデミアナッツ・カンパニーというハワイ初のマカデミアナッツ工場をはじめます。オーストラリア生まれのマカデミアナッツの樹を毎年100本植え、丘陵に流れる小川に収穫したナッツを落とし、現在のカカアコのあたりに作った工場で流れてきたナッツをひろい、製品製造するという、現在では考えられない昔話のようなビジネスを1940年までやっていたそう。ハワイの定番土産マカデミアナッツチョコにこんなに面白い歴史が隠れていようとは!

 のちにオアフ島の気候より、ハワイ島の気候のほうがマカデミアナッツには合うということがわかり、40年代からはその生産地がハワイ島へ移ります。その後、60年代にはダイヤモンドヘッドを望むロケーションが素晴らしいと、ここに建てられたタッセル氏の自宅を訪れたのは、フランク・シナトラ、エルヴィス・プレスリー、クラーク・ゲーブルなど、ハリウッド黄金期のスターたち。

 1980年からは「クレージーシャツ」の創業者リック・ラルストン氏がこの歴史ある場所を残したいと州から借り受けていましたが、せっかくの広大な敷地、なにか出来ないかと、昨年からスタートしたというルアウにたどりつく。そんな奥深い歴史があったのです。

左:桃源郷のような敷地。
右:誰でもお好きに体験をどうぞ! レイ作り。

 夕暮れ時に、数名のハワイアンダンサーに迎えられ、敷地内へ。大きな木の間を抜けていくと、タッセル氏ご自慢の邸宅、その前にはゆるやかにくだる芝生の美しい丘。目線をあげるとホノルルの町並みに夕日が大きくゆっくりと落ちて行く姿。もうこれを見られるだけで、充分に満足できる一日の終わりを感じ、はあ~と吐息もこぼれるわけです。

左:マイタイカクテルを片手にゆっくりとこの雰囲気を楽しむ優雅な時間。
右:緑の茂みの多くは今も残るマカデミアナッツツリー。足元を見れば実が落ちてることもしばしば。

2016.02.23(火)
文・撮影=工藤まや