五感で味わった「ここが好き」を贈る
「誕生日とか特別な日でなくても、ふと、『これ、あの人が喜びそうだなあ』と選んでみる。そんななんでもない日に、ふいに贈るプレゼントが好きだなあ」
と伊藤さんは語る。彼女の交遊範囲は広い。仕事で知り合う編集者やカメラマン、器の作家から、地元の商店街のおじさんまで。好奇心旺盛で、興味を持ったら「ねえねえ」と話しかけ、どんな人ともたちまち仲良くなってしまう。
そして出会った人の数だけ、“いいもの”とも出会う。たとえば、生産の難しいビオのリンゴでつくったジュース。気鋭のガラス作家のシンプルグラス。どれも自分の足で探し、自分の目で見つけた日常の逸品だ。
自分で使ってみて、「ここが好き」と思ったものを贈り物にしている。だから、どのプレゼントにも「このグラス、口あたりが優しいの」「首まわりに触れる素材はやっぱりカシミアがいい」と、五感で味わった実感が含まれている。「ねえねえ、こんなもの見つけたの」。そんな発見のウキウキ感のお裾分けでもある伊藤さんの贈り物は、気持ちが伝わるといつも評判だ。
Masako Ito
スタイリスト。料理、器、洋服など、センスのいいもの選びの視点に定評がある。丁寧な心地いい暮らしを提案。著書に『信州てくてくおいしいもの探訪』(文藝春秋)
2011.11.16(水)
text:Noriko Ichida
photographs:Toru Kometani
styling:Kanae Ishii