美肌の核心は、ピーリングにあり
かくして思い切り悪者にされたピーリングだが、スキンケアの歴史を繙くと、大昔からピーリングは美肌の鍵となってきた。たとえば、舞妓さんのスキンケアは昔から絹の手ぬぐいで肌をふくという方法だったし、昔からの隠れたロングセラーとされる“れんげ化粧水”もレモンによるフルーツ酸配合。そして何より、クリニークの誕生は、当時『VOGUE』の記者だった創業者が、ある皮膚科医への取材でこの“決定的な美肌の鍵”がサリチル酸(AHAではない)にあることを記事にしたことが、ブランド設立のきっかけとなっている。昔から、美肌の核心は、ピーリング、古い角質の除去にあったのだ。
だからピーリングが絶対の正解であることは間違いなく、悪者にされてもやっぱり主役のひとつであり続け、その後も何度となくトレンドになってきているのだ。そして気がつけば、ひとつの常識とさえなっていた。どういうことかと言えば、一般的なアンチエイジングの美容液にも角質除去効果が基本機能のように備わり、スキンケア効果を効かせる技として角質除去を加えることが定番となったのだ。
でもここへきてまた、角質ケアが改めて注目されている。終始一貫、この角質ケアを美肌の核心を突くテーマとして研究し続けてきたクリニークが、肌の自然な生まれ変わりを促すターンアラウンドの新作を発表。単に古い角質を取り除くのではなく、肌の営みのさらなる発見から、肌が自らを理想的な状態につくり直すという最先端の角質ケアとなった。いずれにしても、角質ケアにおいては常に一歩二歩先を行くクリニークが動くと、角質ケアも変わるのだ。
一方で、大人の毛穴ケアをふき取り美容液という形の角質ケアで行うのが、コスメデコルテ。それこそAHAを使用せずにあくまで肌に優しい除去を行い、毛穴を中から引きしめていく新しい美肌磨きをつくった。
そしてHAKUは、目に見える美白を行うためのひとつの決め手として改めてピーリング美白を提唱。メラニン沈着をほぐして古い角質とともに取り除く新しいテクニックが、美白ピーリングを進化させたのだ。
つまりは除去の技術が進化したからこそ、様々な問題を解決するため、縦横無尽に活躍することになるわけで、角質ケアはこれからも小さなトレンドをつくり続け、いろんなトラブルを解決していくのだろう。美肌の核心はいろいろ言われながらも黙々と進化し、いよいよ、なくてはならないものになっていくのである。
齋藤薫 Kaoru Saito
女性誌編集者を経て美容ジャーナリスト/エッセイストに。女性誌において多数のエッセイ連載を持つほか、美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍。『人を幸せにする美人のつくり方』(講談社)、『大人になるほど愛される女は、こう生きる』(講談社)、『Theコンプレックス』(中央公論新社)、『なぜ、A型がいちばん美人なのか?』(マガジンハウス)など、著書多数。
Column
齋藤 薫 “風の時代”の美容学
美容記事の企画、化粧品の開発・アドバイザーなど幅広く活躍する、美容ジャーナリスト・齋藤薫が「今月注目する“アイテム”と“ブランド”」。
2015.06.02(火)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫