何十年ぶりかの進化は、眉づくりのひとワザ、ひと工夫
おそらく、すべての化粧品の中でいちばん“歩み”の遅いのが、このアイブロウというアイテムなのだろう。もう何年も、いやもう10年20年、進化らしい進化を遂げていない。だいたいが、アイブロウとして世に出ているのは、大昔からあるアイブロウペンシルに、昭和の頃からあるアイブロウパウダー、そしてアイブロウマスカラ……その3アイテム以外には見当たらない。たまに“名品”と言われるものが登場しても、なるほど品質は良いものの、この枠の中から飛び出してこない。だから眉づくりばかりは、ずっと時計が止まったままに見えてしまうのである。
結局のところ、眉づくりは自身の眉を再現するしかないわけで、そうなるとあまり化粧品には頼れない。ペンシルでもっともらしい眉を描きあげるか、薄い眉はブロウパウダーで眉毛のフサ感を塗りあげるかしかないから、所詮はその人その人の感性や手先に頼るしかないものなのだ。
でも最近、ちょっと様子が違ってきた。なぜか今シーズンは、アイブロウの新作が多く、よく見るとどれもひとひねり、工夫のあるものばかり。たとえば、ディオールが開発したブロウジェルは、言わばアイブロウのトップコート。眉を描いたあとに上から塗って、眉の形を整えるとともに“もち”を良くするための透明ジェルなのである。もちろん単品づかいで形を整えたり、下向きの眉毛を立てたりするのに使うこともできるが、今や眉トレンドも太眉に変わっていて描き足す部分が多く、日中うっかり消えていたりすると致命的。だからこそ、こういうトップコートが生まれたのである。
2015.06.30(火)
文=齋藤 薫
撮影=吉澤康夫