音楽ビジネスとITに精通したプロデューサー・山口哲一。作詞アナリストとしても活躍する切れ者ソングライター・伊藤涼。ますます混迷深まるJポップの世界において、この2人の賢人が、デジタル技術と職人的な勘を組み合わせて近未来のヒット曲をずばり予見する!
さて、近々リリースされるラインナップから、彼らが太鼓判を押す楽曲は?
【次に流行る曲】
新山詩織「絶対」
新山詩織は高卒でドラフト1位の本格派右腕?
伊藤 今回は新山詩織の「絶対」。実はあんまり彼女のことは知らないのですが、何かでMVをみて記憶に残っていました。パッと見は可愛らしい感じなんだけど、目だけは可愛らしさとは違う輝きを持った女の子だなぁ、と感じました。
山口 企画をお手伝いした、KKBOXとPARCOのコラボレーションキャンペーンの中で、注目の新人としてピックアップしたので、知っていました。光る原石だなと思いました。
伊藤 ギターを弾く姿も、声も18歳とは思えない。なんとなくアラフォーのバンドマンの匂いがして、流行りの“ギター女子”とはちょっと違いますね。
山口 昔からあるオーソドックスな本格派の女性シンガーソングライター。僕の第一印象を野球に喩えると、高卒でドラフト1位の本格派右腕。甲子園経験は無いけれど、関係者から注目を集めていて、1年目は2軍でプロの体力を付けさせて、満を持して1軍デビュー。ローテーションの一翼を担わせながら大切に育成しているという感じです。
伊藤 なるほど……って、やっぱスポーツで喩えるんですね。まぁ読者に伝わってるんならいいですけど(笑)。
山口 アラフォーの男性ならプロ野球比喩は伝わるかなと(笑)。
伊藤 デビューしてまだ2年ですけど、結構な曲をリリースしているので、プッシュされているし、ちゃんと育てられているんだなぁ、と感じる。まだまだ発展途上で、今はその未熟さが魅力になっている。でも、そのうち豹変して大人たちの度肝を抜くような、秘めたるものを持ってそうな顔つきをしています。
山口 なるほど。大化けするのはこれからということですね、それは本当に楽しみです。
不器用さはアーティストにとって大事な資質
伊藤 今のところは、曲はちょっと上手すぎるというか、ちゃんとプロデュースされているというか……。彼女が前面に出ている感じはなく、まだ大人たちに囲まれて歌っている印象です。ただ、詞は良い意味でソリッド。飾らないことを自然にできるアーティストなんだなぁ、と感じる。逆にいうと不器用だし、自分の気持ちとかをちゃんとコントロールできない印象ですね。アーティストとしてはそれを才能と呼べるんじゃないですか。
山口 不器用さというのは、アーティストの資質で必要なことですね。自分に正直で、自分の感情や表現を持てあましていることを才能と呼ぶのだなとよく思います。
伊藤 ですよね。使っている言葉はシンプルなんだけど、強い感情が溢れていますよ。
山口 新山詩織は、PARCOのスペイン坂スタジオで、楽曲を流しながらネットでチャットするKKBOXの「Listen With」というイベントを日本で初めてやったのですが、30代以上の男性と10代の女子という、女性アーティストしては“鉄板”の層のファンがつき始めていましたよ。
伊藤 そうなんですね。ところで“KKBOXの「Listen With」”っていうのはどういう意味ですか?
山口 KKBOXの特徴的なサービスで、自分のプレイリストをリアルタイムで流しながら、チャットする機能です。台湾で始まったKKBOXは、アジアで最大の音楽ストリーミングサービスなのですが、このListen Withがブレイクの理由の一つだと聞いています。ちなみに、台湾本社のKKBOXの親会社は日本のKDDIなので、KKBOX JAPANもこれから伸びると思いますよ。
伊藤 なるほど、ストリーミングの波が日本にもザブンザブンきているってことですね!
山口 そうなってほしいですね。
2014.11.30(日)
文=山口哲一、伊藤涼