笑い声がぴたっと止んで……
体育館内に響き渡る女性幽霊の笑い声に耳を塞いで絶叫すると、笑い声がぴたっと止む。
体育館を見渡す男子高校生に向かってバスケットボールを持った、真っ白な顔の老婆が猛然と走り寄ってくるところで、物語は終わる。
ちなみにこの老婆の幽霊は、やはり三宅隆太が監督を務めた『呪怨 白い老女』〔2009年〕で再び、しかも唐突にスクリーンに舞い戻ってくる。
『怪談新耳袋』と『呪怨』の世界が、この老婆を紐帯にして結びつくのである。
映画秘宝は、『怪談新耳袋』十年ぶりの新作となった『怪談新耳袋 暗黒』〔2023年〕の放送に際して、note においてこのシリーズを以下のように総括した。
『怪談新耳袋』は若手の実力派監督と注目株の俳優たちのコラボレーションで、Jホラーの裾野を広げた。(中略)
5分版の『怪談新耳袋』は先述の清水崇や鶴田法男、佐々木浩久、三宅隆太といった怪奇ベテラン勢がJホラー表現の幅を広げ、豊島圭介、井口昇、内藤瑛亮、大畑創など後に活躍する新人監督たちの実験的演出の場として絶好の番組だった。
高橋洋が初の商業作品として撮った「庭」は伝説となった恐ろしさだ。ちなみにJホラー誕生のきっかけになる上映会を開催した怪奇映画好きの篠崎誠も『怪談新耳袋』で最初の商業ホラーを監督した。加えて安里麻里、大九明子や朝倉加葉子と女性新進監督も登用し、恐怖の幅を広げた。
『怪談新耳袋』は、かつてのオリジナルビデオ作品が若手監督たちの表現の場、演出のアイディアを試す実験の場であったのと同じように、Jホラーを縦にも横にも広げる場としての役割を果たしていた。
新たなJホラーの「実験場」は、オリジナルビデオでなく公共の電波に乗るテレビ番組として成し遂げられたのである。
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