なぜ幽霊は「髪の長い女性」なのか、なぜ「ビデオ」が呪いを伝播させるのか。
気鋭の映画研究者がジェンダー/メディアの観点でJホラーの本質を緻密に分析する『Jホラーの核心:女性、フェイク、呪いのビデオ』(ハヤカワ新書)を一部抜粋してお届けします。
ここで紹介するのは『怪談新耳袋』。いきなり始まり、いきなり終わる恐怖の物語とは……。(全2回の1回目/続きを読む)
説明不可能な怪異
『怪談新耳袋』は、木原浩勝と中山市朗によって蒐集された実話怪談集『新耳袋』〔扶桑社、1990年。メディアファクトリー、1998年~。角川書店、2002年~〕を原作とする映像作品シリーズである。
2003年から2010年にかけてテレビシリーズやスペシャル版、劇場版が放送・公開されたほか、ライターのギンティ小林をはじめ、木原や中山、映画監督の清水崇などが心霊スポットを訪れるスピンオフ作品『怪談新耳袋 殴り込み!』シリーズなども発売された。
最新作は、シリーズ開始から二十周年の節目となる2023年に放送された『怪談新耳袋 暗黒』である。
『怪談新耳袋』シリーズではテレビシリーズをはじめ、オムニバス形式で構成される作品の場合、収録されるドラマは一篇につき5分(初めての劇場版『怪談新耳袋 劇場版』〔2004年、監督:三宅隆太ほか〕は10~15分程度)であるため、怪奇現象の原因やその体験の結末が明確にならない話も数多く存在する。
しかも、第1シリーズから第4シリーズにおいては一日につき一篇のみが放送されていたため、番組の放送時間はわずか5分であった。視聴者は『怪談新耳袋』を通して、いきなり始まり、いきなり終わる恐怖の物語(中には面白おかしい話、不思議な話もあるのだが)と邂逅するのである。
この「邂逅」感、言い換えれば、視聴者自身が説明不可能な怪異と出くわしてしまったかのような感覚こそ、『怪談新耳袋』の最も恐ろしい特徴だと言える。










