トイレのドアがひとりでに開いて……
『怪談新耳袋』の「邂逅」感の極致とも言える作品を、いくつか挙げておこう。
まずひとつめは、2003年に放送された第一シリーズの一篇「修学旅行」〔監督:三宅隆太〕である。
修学旅行である旅館に宿泊した語り手の少女・チアキ〔演:栗田梨子〕は、旅館の化粧室にリップクリームを忘れてきてしまう。
彼女が慌てて取りに戻ると、真っ暗な化粧室内でトイレの個室のドアがひとりでに開く。
チアキはドアを閉めてその場を立ち去ろうとするが、彼女の背後で再びドアが開く音が聞こえる。
もう一度ドアを閉めようとすると、何かがつっかえているかのようにドアが閉まらない。
チアキがふと視線を上げると、個室の中から白い手がドアをつかんでいるのが見える。
チアキが飛びのくと、ドアがゆっくりと開き、個室内から女性幽霊の足と首がすっと伸びてくる(女性幽霊のパーツは、手はドア上部、足はドアの真ん中ぐらいの高さ、首はドア下部と、それぞれちぐはぐな場所から伸びてくる)。
逃げ出そうとするチアキだが、化粧室のドアが開かない。
迫りくる幽霊に絶叫すると、化粧室の電気がつき、幽霊の姿は消えていた。
女性が出てきた個室をあらために行くと、そこには何もいない。










