ほっとしたのもつかの間、ドアの影に……

写真はイメージです。©アフロ
写真はイメージです。©アフロ

 カメラはそこにたたずむ着物姿の女性をズームで映し、チアキの絶叫が響いて物語は終わる。

 「修学旅行」は、「ほっとしたのもつかの間」というある意味定番の展開でありながらも、女性幽霊が明るい空間に再び姿を現したところで終わってしまうため(しかも、カメラは高速で女性幽霊に寄る)、この幽霊が何者なのか、チアキは無事なのか、何ひとつ説明されることはない。

 出会いがしらの事故のような衝撃のまま、深夜、観客はテレビの前で呆然とするほかないのである。

 わずか5分の超短篇ドラマの中で、弛緩(物語の始まり。明るく日常的な場面)→緊張(ひとりでトイレに戻る。ドアが開く)→弛緩(ドアを閉める)→緊張(ドアが再び開く)と、これでもかとばかりに観客の心を揺さぶってくる傑作と言えよう。

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