弱い者が真ん中にいると人は優しくなる

 トレーナーや飼い主さん、撮影スタッフ、俳優陣が一丸となって犬ファーストを貫き、犬にも人にも優しい作品づくりに挑戦した本作。そんな撮影の舞台裏を、内藤プロデューサーに聞きました。

「撮影現場は最初から和やかでしたが、芝居となると人間同士とは勝手が違うので、戸惑うこともありました。それは、犬を“道具”として扱うのではなく、共演者として対等に向き合っていたからです。“犬がいい演技をしているな”と思えば、役者さんが自分の芝居を優先できない場面もあって、素の自分と役を行き来することも。ある意味、役者さんにとってはドキュメンタリーのような撮影だったと思います」

 さらに、犬たちを長時間待たせない、何度も演技させないといったことが求められる中で、俳優陣が自然と始めたのが「犬待ち」の時間です。

「大東さんたちは、のこちゃんのすぐそばにいるからこそ、モニター越しでは気づけないちょっとした“そわそわ”を敏感に感じ取っていました。そこで立ち止まる時間を大切にして、“行けそうだな”という空気に変わった瞬間に、じわっとカメラを回していく。すべてが犬の気持ちに寄り添うための工夫でした」

 また、屋外のロケシーンを先に撮り終えるという異例のスケジュールを組んだのも“犬ファースト”の姿勢から。

「撮影の順番がバラバラになって、役者さんたちは演じにくかったはずなのに、誰ひとり不満を口にすることはありませんでした。犬が動かない限り撮影は終わらないので、“どうすれば気持ちよくできるだろう”と自然に考えるようになっていきました。弱い者が真ん中にいると、人は優しくなる。そのことを強く感じました」

 犬は好きだけど犬や周囲の人の気持ちは分からず自分本位な相楽が、犬を介して他者とつながり成長していく姿も見どころの物語は、いよいよクライマックスへ。11月25日(火)放送予定の第8回は、「シバフェス」という、本作で最もたくさんの柴犬たちが登場する夢のようなエピソードです。

「犬は家族であり、同僚であり、時には先生にもなる、人にとってかけがえのないパートナーです。ドラマを通して、そんな”犬と人の化学反応”の面白さや、犬と人間の関わり方について考えるきっかけになれば嬉しいです」

ドラマ『シバのおきて~われら犬バカ編集部~』

https://www.nhk.jp/g/ts/E4LJK16GLZ/

原作:片野ゆか 『平成犬バカ編集部』
脚本:徳尾浩司
音楽:YOUR SONG IS GOOD
出演:大東駿介、飯豊まりえ、片桐はいり、こがけん、篠原悠伸、やす、黒田大輔、水川かたまり/柄本時生、津田健次郎、MEGUMI/瀧内公美、勝村政信、松坂慶子 ほか
制作統括:高橋練(NHKエンタープライズ)、渡邊悟(NHK)
プロデューサー:内藤愼介(NHKエンタープライズ)
演出:笠浦友愛、木村隆文、加地源一郎、村田有里(NHKエンタープライズ)