流行の移り変わりが目まぐるしく、日々新たな文化が生まれる韓国だが、ここ数年、韓国の伝統文化をモダンに表現する若いクリエイターや事業家が増えているような気がする。
NYで暮らしていたキム・ドンヒョンさんもそのうちの一人だ。忘れられつつある韓国茶文化の美しさと、本質的な韓国の文化を後世に伝えようと、今年8月ソウル・三成洞(サムソンドン)に「露瀣(ロヘ) ROHAE」(以下、ロヘ)をオープンした。
序幕となった展示テーマは「JAKSEOL:Unearthing Korean Tea」。JAKSEOLとは、1000年以上にわたり人々に愛されてきた雀舌(ジャクソル)茶のこと。
雀の舌のように小さく繊細な形をした、黄緑色でまっすぐに伸びた春に芽吹く茶の若芽を、丁寧に加工することで雀舌茶となる。鮮やかな色、豊かな香り、繊細な味わい、そして何よりもそこに込められた気品が魅力だ。
展示されている「梅月堂集」には、韓国初の小説「金烏神話」の著者キム・シスプ氏(1435-1493)の茶生活の全過程が70の詩で記録されている。そしてキム・シスプ氏の18代目こそがロヘの代表である、キム・ドンヒョンさんその人。先祖の魂を約500年以上もの時を超えて受け継いでいるのだ。
「日本では日常にお茶が根付いていると思いますが、韓国では、特に若い人たちはお茶を全然飲みません。何百年も受け継がれてきた美学が込められた、一杯のお茶。韓国の茶文化と先人たちが大切にしていた感性や真心、哲学を伝える展示にしたい」とキムさんは言う。
ロヘで出されている鳳團茶(ポンダンチャ)は、高麗・朝鮮時代の団茶文化を継続しようという挑戦だ。団茶とは、蒸した茶葉を臼でついて固めて作った固形茶のことで、日本には奈良時代に伝わったとされる。
ロヘの鳳團茶には美しい模様がほどこされ、飲むことが惜しまれるほど。
隣には1000年前の書物が展示されており、高麗時代や李朝の陶器、貴重な古家具も並び、まるで小さな博物館のようだ。
