『シェイプ・オブ・ウォーター』(2017)や『パシフィック・リム』(2013)などの鬼才ギレルモ・デル・トロが、生涯にわたって実現を望んだプロジェクトがその全貌をあらわす。最新作『フランケンシュタイン』が11月7日にNetflixで配信開始となるのだ(10月24日に一部劇場公開)。
天才科学者ヴィクター・フランケンシュタイン(オスカー・アイザック)は、最愛の母親が早くにこの世を去ったことから「死」を克服する禁忌の実験に乗り出した。ところが、戦場の死体を組み合わせて産み出したのは、恐ろしい姿の“怪物”(ジェイコブ・エロルディ)で……。
少年時代から『フランケンシュタイン』にひかれ、長年構想を温めてきたデル・トロは、「個人的な作品になると思っていた」と明かす。キーワードは「家族」と「父」。非常に厳しかった自らの父親と、デル・トロ自身の息子との関係が核心にある。
フランケンシュタインと家族、そして父親の物語とは――。9月下旬に来日した本人への単独インタビューで、自身の『フランケンシュタイン』と人生観を聞いた。
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フランケンシュタインとの出会い
監督デビュー作『クロノス』(1992)から、人気コミックの映画版『ヘルボーイ』シリーズや『ブレイド2』(2002)、そして前作『ギレルモ・デル・トロのピノッキオ』(2022)まで、デル・トロは過去作の多くに『フランケンシュタイン』の影響があると語る。
デル・トロは1964年生まれで、今年61歳。映画史に輝くモンスターである“フランケンシュタインの怪物”と出会ったのは1971年ごろで、まだ7歳の少年だった。
ギレルモ・デル・トロ(以下、デル・トロ) 1969年に父が宝くじに当たり、家族で大きな家に引っ越しました。日曜日は朝8時に教会へ行き、その日の食べ物を買って、家に帰るとテレビを見ていたんです。モンスター映画が毎週放送されていたので、日曜日は教会へ行き、モンスター映画を観る習慣でした。それで、ある日『フランケンシュタイン』を観たんです。
その映画は1931年製作『フランケンシュタイン』で、監督はジェイムズ・ホエール、怪物役はボリス・カーロフ。デル・トロは怪物の姿を一目見るや、「教会ではわからなかったことがすべて理解できた」という。
