海のゴミもアップサイクルで遊び道具に

続いて体験したのは、海洋プラスチックを活用したキーホルダーづくり。知床の海岸には、ペットボトルや缶、漁網やブイ、さらには劇物が入った缶まで、多種多様な海洋ゴミが漂着し、深刻な問題になっています。



「知床ゴミ拾いプロジェクト」メンバーの村上晴花さんは話します。
「知床は海流に乗って流氷や鮭が流れ着く場所でもありますが、そのため海のゴミが集まる場所でもあります。冬の高波でいったん流されてもまた新しいゴミが漂着する。つまりゴミが“毎年入れ替わる”んです。でも裏を返せば、年に一度しっかり拾えば、その1年間はきれいに保てるということ。ゴミを海に戻さないことで、10年後の“ゴミ拾いをしなくてもいい知床”を目指して、めげずに活動しています」

そうしてゴミ拾い活動を続ける中で、新たな課題も生まれてきました。たとえば、ビーチクリーンでブイやゴミを拾っても、これまでの活動では、埋め立て処理をしていました。知床の山々のふもとに埋め立てられていたんです。それでは、海のゴミを単に山に移動させているだけで意味がないのでは、とふと感じたのだそう。
村上さんたちの苦悩を感じとったゴールドウインは、知床で回収した海のゴミをリサイクルして、フライングディスクに再生。ゴミを新しい形に生まれ変わらせ、生活の中で活用できるようにする取り組みをはじめました。こうした活動を通して、知床の自然と向き合いながら、持続可能な未来を目指しています。


筆者はこのフライングディスクを購入。後日、わが子と一緒に遊びながら「これは海のゴミを拾って作ったものなんだよ」と、知床で見聞きしたことを伝えました。まだ5歳なので、どこまで理解してくれたかはわかりません。自分にできることはほんの些細なことですが、身近なところから知床で学んだことを伝えていきたい、そう思わされました。
森のあまりものだって主役に

ほかにも、本来は捨てられてしまう知床の間伐材を活用したコースターづくりも体験。地元で製材工場を営む方の「プレカット加工の過程で出てしまう端材がもったいない。何かに使えないか」という発想から、この取り組みがはじまったそうです。


2025.09.30(火)
文=山畑理絵
撮影=深野未季