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 自らの足で歩くトレッキングでしか会いにいけない、絶滅危惧種の希少なマウンテンゴリラ。だからこそ一生に一度の、人生観を変える旅になる。ルワンダ、ヴォルカノ(火山)国立公園の森深く、彼らに遭遇する唯一無二の心震える体験を。


自然保護と地域社会が共存する観光のかたち

 ゴリラに会う日の朝は早い。

 午前7時に国立公園事務所に集合し、8人のグループに分かれて、まずはガイドのブリーフィング。最低7メートルの距離をおくこと、(ゴリラの)感染症防止のため出会ったらマスク着用などのルールが説明される。

 準備が整ったら各自車で出発地点に向かう。道はもちろんオフロード。トレッキングはどのロッジに泊まってもRDB(ルワンダ開発庁)の管轄だが、ガイドドライバー付きの4WDを各ロッジが手配する。

 歩き始めて1時間足らずでゴリラが生息する茂みに到着した。ここでルワンダならではのレクチャーがある。ダイアン・フォッシー直伝のゴリラの生態模倣だ。万が一、ゴリラに威嚇されたら仲間であることを示すのだ。

 最初に姿をあらわしたのは子連れのゴリラだった。

「アマホロよ!」

 ガイドの女性が耳元でささやく。彼らが属する家族の名前だった。

 マウンテンゴリラの家族は、成熟したオスのリーダー「シルバーバック」(背中の銀色の毛に由来)が率いる。

 まもなくしてアマホロのシルバーバックが姿を現した。

 ゴリラが人間と会っていいのは、きっかり1時間と決められている。

 茂みの奥に消えては追いかける。そうかと思えば突然、目の前を群れが横断する。息つく間もない1時間だった。

 興奮冷めやらぬ帰路、ゴリラの生息地をモニタリングする「トラッカー」と呼ばれる専門家チームに出会った。

 毎朝、前日の目撃地点を参考に場所を特定する。私たちが短時間でゴリラに会えるのは、直接的には彼らの活躍のおかげなのだ。

 許可証の収益の10%は、彼らが暮らす地域社会に還元されている。ゴリラが農作物に被害を与えた場合の補償金もここから支払われる。こうしてゴリラと地域と観光が共存している。

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Column

CREA Traveller

文藝春秋が発行するラグジュアリートラベルマガジン「CREA Traveller」の公式サイト。国内外の憧れのデスティネーションの魅力と、ハイクオリティな旅の情報をお届けします。

2025.09.22(月)
文=山口由美

CREA Traveller 2025年秋号
※この記事のデータは雑誌発売時のものであり、現在では異なる場合があります。

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