意思決定で気をつけなければいけないこと

――意思決定で気をつけなければいけないことはありますか?
中島 親が何でも先回りして選択肢の作成までしてしまうと、自分で決断できない子どもになってしまう恐れがあります。
いくら親とはいえ、子ども自身の問題は子ども本人でなければ解決できません。問題の明確化をする際に「解決のために自分で動くつもりがあるか」というチェック項目を設けていますが、これは状況によって「解決のために動くべきは自分なのか?」という問いに置き換える必要があります。
人は自分で決めたことだからこそ、責任をもって取り組めます。「本人がすべき判断を奪わない」というのは、職場で部下や後輩と接する時も非常に重要です。先回りして選択肢を作成するのではなく、解決方法を一緒に考え、最終的にその人が自分の価値に沿ってすべきことを決められるよう見守る姿勢も忘れないでください。
――決めた後に「やっぱり違ったかも」と思うのは、まだ「もじせか」が十分にできていないからでしょうか。
中島 選んだ先で何か違和感を持つことは誰でもあると思います。でもその時は、また軌道修正すればいいのです。決断は「一生の最終決断」ではなく、「今の自分が納得できる選択をすること」。そう考えるだけでも、気持ちがラクになります。
私がマンションを即決で買ってしまったお話を前篇ではしましたが、「これで良かったのかな」と悩んだこともありました。でも、最終的に自分で決めたことは納得できますし、もし次に引っ越す時には、この失敗を活かしてベターな選択をすることができるはずなので、今はいい経験だったと思えるようになりました。

――家族や会社、社会の期待に応えようとして、「自分の本心」を置き去りにする人も多いと思います。「決められる人」になるためのアドバイスをお願いいたします。
中島 今もし、何かに迷っている方がいたら、自分の人生にとって、何を優先したいかをもういちど考えてほしいと思います。誰かに決められるのではなく、自分の手で選びとっていく先に、本当の意味での“自由な人生”があると思っています。
まずは日常の小さなところから、自分の意思で決める体験を重ねてみてはいかがでしょうか。たとえば、「今日のランチ、何が食べたい?」「それは誰のために決めた?」などでもよいと思います。
できるようになったら、もう一歩進めて、「なぜ自分にとって大切なのか」も考えてみてください。繰り返すうちに、きっとよい選択ができるようになっていくはずです。
》【前篇】直感でマンションを即買いの失敗も……臨床心理士が解説! 誰でも「本当の決断力」を得られる“簡単4ステップ”
中島美鈴(なかしま・みすず)
1978年福岡県生まれ、臨床心理士。公認心理師。心理学博士(九州大学)。専門は時間管理とADHDの認知行動療法。
肥前精神医療センター、東京大学大学院総合文化研究科、福岡大学人文学部などの勤務を経て、現在は中島心理相談所所長。ほかに、九州大学大学院人間環境学府にて学術協力研究員および独立行政法人国立病院機構肥前精神医療センター臨床研究部非常勤研究員を務める。著書には『ADHDタイプの大人のための時間管理ワークブック』(星和書店)、『ADHD脳で困ってる私がしあわせになる方法』『マンガでわかる精神論はもういいので怒らなくても子育てがラクになる「しくみ」教えてください』『マンガで成功 自分の時間をとりもどす 時間管理大全』(以上主婦の友社)、『脱ダラダラ習慣!1日3分やめるノート』(すばる舎)など、本書を含めて全55冊
がある。時間管理の専門家としてNHK「あさイチ」への出演や、朝日新聞でのコラム連載やセミナー講師など、多方面で活躍している。

マンガで挑戦とっちらかった頭の中を整理して決められる人になる
定価 1,870円(税込)
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2025.07.30(水)
文=相澤洋美
撮影=平松市聖