京都人動画が大ヒット! 484万再生の舞台裏

――確かに、京都人と非京都人を画面右左で対比させて見せるスタイルはポップでわかりやすいし、ショート動画のノリにも見事にハマってます。
おかげさまでSNSでようけ拡散してもろて、特にタイトルに「京都人」って冠を付けてからは再生回数も急激に伸びました。
――ちなみに現時点での最大再生回数はどれぐらい?
484万回再生です。コメントを見たら、いわゆるお笑いファンとは違う、中高年の方も多くて。京都に限らず、いろんな都道府県の方に見ていただいているみたいで、京都ブランドの強さを実感しました。京都の人には怒られるかなとドキドキしてたんですが、意外とおもしろがってくれてホッとしました(笑)。
――かくいう私も生粋の京都人なんですが、長谷川さんの京都人動画を見て、「ようこんなまわりくどい言い方するな~」と感心しました(笑)。
京都の人はなにか伝えるにしても、表現が遠まわしですよね。家の中で母親に「掃除してんねけど、まだここ居はる?」って言われてて、何を聞かれてるんかと思ってたんですが「邪魔やからどいて」って意味やったとか。家の中でも外でも京都を沢山感じれる環境で育ちました(笑)。
一説には、京都は応仁の乱の時代に権力者が変わりすぎて、誰が敵になるか味方になるかわからない状況があったから、誰にも角が立たんようにうまいこと伝える文化が育まれたそうなんです。遠回しすぎて、言われてるときは意味がわからなくてポカーンとするけど、時間が経ってから、あ、怒ってはったんや! と気付く。
京都人の喋りは、時間差で爆発する時限爆弾みたいな感じですね。
――その場でドカーンと爆発する大阪人とは真逆ですよね。
「京都人と大阪人」シリーズの動画を見てもろてもわかるように、大阪人と京都人は同じ意味のことを言ってても、命令形と疑問形ぐらい違いますよね。
たとえば、なんか嫌なことを言われたとして、大阪の人なら「うるさい! 黙れ!」で済むところを、京都人は「なんでそんな言い方しかできひんのやろね~。なんか嫌なことでもあったんからしらね~」って、二行ぐらい喋らんと済まへん。
ご飯誘うにしても、大阪人なら「ご飯いこか」の一言で済むところを、京都人は「うちは行きたいなと思ってるんやけど~、でもね、このあと予定あらはったりしてもあれやから、断ってくれはってもええねんよ~」とか永遠に喋り続けることになるんです(笑)。
現代人必修!? 「心の中の京都人」があなたを救う

――京都人は裏表があって怖いと言われがちですが、むしろ可愛い。
そうなんです! 実はめちゃくちゃ不器用で可愛げがあるんですよ。
――それでいて、言いたいことはちゃんと言う。傘を振って歩くマナーの悪い人に「お髭の京都人」が「さっきからえらい元気によう手振って歩いてはるね~ でも傘持ってはる時ぐらいおとなしいしたはる方が褒められると思うけど」という動画には、よくぞ言ってくれた! と拍手したくなりました。
確かに、動画を見て下さった方からは、「なかなか言えへん気持ちをよう言ってくれはった」とか「怖いけどスカッとした」みたいなコメントをよくいただくんです。
僕自身がそうなんですけど、なんか嫌なことをされても、面と向かってはなかなか言い返せない。よく、「後でモヤモヤするんやったら、その場で言ってくれたらええやん」っていう人がいるけど、僕そういう人が苦手で。「そもそもお前がそんなことせえへんかったらええだけの話やし、なんでお前が被害者みたいになってんねん。何十年も生きてきて、なんでこの人はこんなことに気づけへんねんろ~?」って。
僕自身、そういう思いをずっと抱えながら生きてきたので、心の声を“京都人”に託して言ってる感じはあります。
――長谷川さん自身、「京都弁は人を傷つけるためではなく、どうしようもない時に気づかれないよう文句をいう時や、喧嘩を避けたい時など、自分の身を守るために使ってください」と注意喚起されていますが、京都弁はいけずどころか、ハードな世の中を無傷で渡ってゆくための護身術と言えるのかもしれません。
別にわざわざ京都弁で言い返したりしなくても、心の中に京都人がいればいいと思うんですよ。心の中だけでも言い返せたら、ある程度はスッキリできるので、そのための構文として使ってもらえたらありがたいですね。
むしろ、現実のシーンで京都人動画の切り返しをしたら、大丈夫かなと心配になるんで(笑)。
2025.07.31(木)
文=井口啓子