甘じょっぱくも繊細な生地の台湾パイ

ころんと丸く、おまんじゅうのようなパイは台湾の人気スイーツです。小豆のこしあんと塩漬けのアヒル卵をパイ生地で包んだ「タンファンスー(蛋黄酥)」は、月餅のように中秋節(日本では中秋の名月)の時期によく食べるメジャーなパイ。
刻んだ落花生をヌガーのように麦芽糖で固めた「たっぷり落花生パイ(花生酥)」や、黒胡麻のコクのある風味が口いっぱいに広がる「たっぷり黒胡麻パイ(黒芝麻酥)」など、“たっぷり”の名に恥じない、すきまなくぎっしり詰まったあんに感動してしまいます。甘いだけだと飽きてしまうかもしれませんが、3つとも“甘じょっぱい”のがいい感じです。比較的新しい製法だという台湾生まれのパイ生地は、層の一枚一枚が薄く、とても繊細な口当たり。

台湾、中国・南京市、中国・北部地方と、作られるエリアによって、パイの味も食感も合わせるフレーバーも鮮やかに変わるのが見事。ぜひ食べ比べて、その違いを感じてみて。
日本の中華街でもおなじみの麻花が、中国本土で大きく進化!

横浜や長崎の中華街によく行かれる人は「麻花(マーホア)」というお菓子を知っているかと思います。しかし、あの歯が折れそうなほど硬い菓子と、姿形は似ていもまったく非なるもの。まず、「劉記 中華面食」のねじねじ揚げ(麻花)はとても大きい。日本で売られている麻花の3倍近くはあるかも。そして硬くない。さらに、蜂蜜やヨーグルト餡、小豆餡、ドリアン餡(!?)など、たくさんのフレーバーで展開しています。

「中国の麻花はやわらかいのがスタンダード。15~20年くらい前から流行り始めたと聞いています。小麦の生地をねじって揚げたものなので、中国版ドーナツといえますね。常に新しい油で揚げることで、外はサクッと香ばしく中はふんわり仕上げています」(店主・劉惢さん)
ドーナツや給食の揚げパンを想像していると、みちっと詰まった生地の密度の高さに脳が一瞬バグります。電子レンジで温めるとふんわり感がよみがえるので、ぜひリベイクを。初めて食べるならシンプルな蜂蜜入りがおすすめ。ヨーグルトはちょっと酸味があって後口爽やか。小豆あんは食べやすいこしあんで日本人に人気が高く、ドリアンあんは中国人好みだそう。
レーズンのようにコク旨なナツメのパン

日本では薬膳のイメージが強いナツメですが、中国ではお茶菓子としておなじみのドライフルーツなんです。冷え性緩和や美肌、アンチエイジングなど、女性に嬉しい効能も期待できると言われています。
実はこの「ナツメのカステラ」、CREA WEB編集部のKさんが「北京留学時代に毎日、食べてた♡これこれ、この味!」と目を輝かすイチオシの一品なんです。水と油は一切使わず、小麦粉と卵、黒糖のシンプルな生地に刻んだナツメを加えて焼き上げたもの。しっとりふわっとした生地で、ナツメの深みのある甘さや香りが余韻に残ります。ナツメの食べた感じはレーズンに似ていますが、それよりも甘さにクセがないかも。また食べたくなる、後引くおいしさです。
「たっぷりナツメと黒糖の蒸しパン」は、醗酵した生地を蒸したもの。もちもちの食感で、カステラとはまた違ったナツメの魅力が楽しめます。
2025.06.28(土)
文=嶺月香里
写真=鈴木七絵