この記事の連載
中華ベーカリー【お食事パン篇】
中華ベーカリー【菓子パン篇】
餃子好きに刺さる! 香ばしい薄皮の「お焼き」

店の一番人気は? と店主に問うと、「お焼きです!」と元気に即答。ゆるめにこねた小麦粉の生地を薄くのばし、肉や野菜を混ぜた“あん”を包んで油で焼いた「お焼き」は、野沢菜や茄子を包んで焼いた長野のソウルフード「おやき」とよく似ています。でも、「劉記 中華面食」のお焼きは小ぶりで平たく、主役は肉! 中国では「シィァンピン(餡餅)」と呼ばれていて、あんの具は豚肉とニラがスタンダード。

「鉄板で香ばしく焼き上げると、薄皮が肉汁を吸ってとてもおいしい。私が住んでいた大連では、朝食によく食べていましたね」(店主・劉惢さん)
初めて食べる中国のお焼き、わくわくしながら頬張ると「あれ、この味知っている……? 餃子だ!」と気づきます。肉汁と油を吸った香ばしい薄皮に、肉の旨味をとじこめたあん、ニラや玉葱の香りと旨み。日本人が大好きなあの味を、ワンハンドでパンとして食べる感じでしょうか。店で一番人気になるのも納得のお味でした。
小麦に精通した、中国パンの専門店が作る傑作水餃子

ゆでるとぷっくらふくらんで、付けダレ不要で味わえる(写真下)。
小麦を使った食べもの「面食」の専門店だけに、「水餃子」も機械を使わずに手包み。皮は薄過ぎず、厚過ぎず、もちっとしつつもツルリと滑らかな舌触り。皮が旨いのはもちろんのこと、具に「鰆(サワラ)」や中国漬物の「酸菜」などを使っているのがユニークです。
「故郷の大連は、中国の北の方にある港町。だから、鰆やエビなどの海鮮をあんにした水餃子もよく食べていました」(店主・劉惢さん)
水餃子は冷凍で販売しているので、多めに購入して冷凍庫にストックしておくと、いつでも中国の小麦文化の深淵に触れられること請け合いです。
日本人向けなアレンジは一切していないし、初めて食べる味も多いけれど、どれも日本人の舌にしっくりなじむ中国パン。アジアが生み、育んだ小麦粉料理を心ゆくまで堪能してみて。

後編では、さくほろ食感のパイやみっちりとした生地の揚げパンなど、おやつにぴったりな「劉記 中華面食」の甘いパンを紹介します。
劉記 中華面食(リュウキ チュウカメンショク)

所在地 東京都江戸川区松島3-14-3
電話番号 03-5661-3080
営業時間 8:00~20:00
定休日 なし
交通 JR新小岩駅より徒歩7分
Instagram @liujimianshi

2025.06.28(土)
文=嶺月香里
写真=鈴木七絵