無名異焼の最大の特徴はその土

 早速、作陶体験の前に、無名異焼の大本である、無名異土を作る工房を見学させていただくことに。

 工房へ足を踏み入れると「小屋全体が赤くなっていますね」と山田さん。

 実はこれも無名異焼の特徴によるもの。無名異焼は土づくりから始まります。土づくりは無名異焼の根幹を成す部分で、「水簸(すいひ)」と呼ばれる作業を通して丹念に作る作業はなんと1年もかかるのだとか。精製された粒子の細かい赤土のみを使用するため、その粒子によって、部屋の中が赤く染まってしまうのです。

 粒子の細かさから、窯で焼いた時の収縮率も高く、一般的な陶磁器の平均収縮率が10%~15%ほどなのに対し、無名異焼は約30%も収縮するのだと言います。そのため焼成におけるリスクが高く、技術の習得が難しいのです。

「作るのは難しいのですが、その代わりに非常に硬い焼物に仕上がるんです。北沢窯では無名異焼を使った風鈴を作っているのですが、金属音のような音が鳴るんです。普通の焼物ではそうはいきません。音が鳴らないどころか、割れてしまう。これも無名異焼の特徴のひとつです」(其田さん)

 無名異焼の最大の特徴、無名異土の神秘に触れたら、いよいよろくろ。今回はご飯茶碗に挑戦です。

 陶芸体験はあるものの、時計回りのろくろは初めてだという山田さん。悪戦苦闘しながらも、無事にお茶碗の形作りを終えました。

「これがお茶碗のサイズにまで縮むなんてお話を聞いた後でもびっくりですね。無名異焼は使いこむほど表情を変え、美しくなると聞いたので、このお茶碗と日常をともにして、私だけの器に成長させたいですね」(山田さん)

 北沢窯では窯を訪れる人たちに、無名異焼は「育てる、うつわ」と伝えているそうです。愛着を持ってともに歳を重ねることで新たな魅力が生まれるのです。酸化鉄を多く含む土の性質上、無名異焼を普段使いすることで、鉄分のイオン層を自然と摂取することができるそうで、貧血気味の人にもいいのだとか。

 日常をともに歩む器として、自分用にも、ギフトにもぴったりの無名異焼。佐渡を訪れた時には窯元を覗いてみるのもいいかもしれません。

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衣装クレジット

ジャンプスーツ 15,400円/ヤエ(yae_info@auntierosa.com)、イヤリング 20,900円/テン(テン 伊勢丹新宿店 03-3352-1111[大代表])、その他/スタイリスト私物

山田杏奈(やまだ・あんな)

2001年生まれ、埼玉県出身。2011年、『ちゃおガール2011☆』オーディションでグランプリを受賞。18年、映画『ミスミソウ』で初主演を務める。19年にヒロインを務めた映画『小さな恋のうた』では第41回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞を受賞。映画『ゴールデンカムイ』と『正体』の2作品で第48回日本アカデミー賞新人俳優賞を、『正体』で優秀助演女優賞を受賞。8月15日公開 W主演 アニメ映画『ChaO』ヒロインの人魚姫・チャオ役にて声の出演が決定。

北沢窯

所在地 新潟県佐渡市相川北沢町3-1
電話番号 0259-74-3280
営業時間 9:00~17:00
定休日 冬季は土日祝、そのほか無休 ※不定休あり
https://www.kitazawagama.com

2025.05.24(土)
文=CREA編集部
写真=杉山拓也
動画=さどやニッポン
ヘアメイク= 菅長ふみ
スタイリング=中井彩乃