佐渡島はその特殊な成り立ちから、独特の自然美や伝統文化が息づいています。そんな佐渡特有の美しさに注目し、誕生したのが「さどの島銀河芸術祭」。佐渡島には、芸術祭の作品のみならず、いたるところで“アート的な存在”の出会いが。

 そんな独特の美しさに満ちた佐渡島を、第一歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』で鮮烈なデビューを果たし、昨年末に新刊『地球と書いて<ほし>って読むな』を上梓した上坂あゆ美さんが訪れました。

» 『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』にも掲載されている「二ツ亀」
» 佐渡島北部に展示された「さどの島 銀河芸術祭」のアート作品
» 両津港周辺にもさまざまなアート作品が展示されている
»まるで集落全体が美術館。地元住民の作品が集う「両津大川の版画」
»佐渡島に点在する“アートな存在”を写真ですべて見る


まずは『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』にも掲載されている、亀の形をした島々へ

 まずは、佐渡の自然が生み出した芸術を堪能するため、最北端に位置する「二ツ亀」と呼ばれる景勝地へ。夏は海水浴場として人気のこの場所は、環境庁が選定した「快水浴場百選」にも登録されるほど海水の透明度が高く、美しい海として知られています。満潮時は離れ島、干潮時は佐渡とつながる陸地が現れるトンボロ現象が発生し、潮の満ち引きによって変わる景色も魅力の一つ。あいにくこの日は、前日降った雨の影響で透き通った海は拝めませんでしたが、大海原に浮かぶ二ツ亀の姿は絶景そのもの。

 海沿いの「二ツ亀自然歩道」という岩場の道を進むと、一枚岩の半島「大野亀」へつながります。二ツ亀と同様にいずれも姿が亀に似ていることから名付けられたとのことですが、一説では亀はアイヌ語の「神様(カムイ)」につながる神聖な島という意味もあるそう。

 大野亀は初夏が一番の見頃。トビシマカンゾウという黄色の花が一面に広がり、透き通った海とのコントラストがなんとも美しいのです。6月の第二日曜には「佐渡カンゾウ祭」も行われ、毎年多くの観光客でにぎわいます。

 二ツ亀、大野亀ともに、日本を訪れる外国人観光客向けガイドブック『ミシュラン・グリーンガイド・ジャポン』で二つ星を獲得しているスポット。ベストシーズンに一度は訪れたい場所です。

海蝕洞穴に作られた冥途との境「賽の河原」

 二ツ亀と大野亀をつなぐ自然歩道の途中には「賽の河原」があります。賽の河原とは、親に先立ち亡くなった子供の魂が死後にたどり着く場所で、冥土の三途の川の手前にある河原と言われています。日本各地にありますが、ここ佐渡では波の侵食によって自然発生した海蝕洞窟の中に存在していました。

 昔は親より先に亡くなることが親不孝とされていたため、賽の河原に辿り着いた子どもたちは、両親のために祈りながら石を積み上げて塔を作ります。しかし何度作っても鬼によって壊されてしまうことから、「賽の河原の石積み」は無駄な努力の例えとして現在でも使われています。最終的には地蔵菩薩が現れて、子どもたちは救われます。

「賽の河原の存在は知ってはいたものの、実際に訪れたのは今回が初めて。島の北端に位置していたり、ひっそりとした洞窟の中だったり、日本海の激しい波のたち方も相まって、想像以上に心を打たれました」(上坂さん)

2025.03.05(水)
文=斎藤美穂子
写真=佐藤 亘