島中にアートが点在する「さどの島 銀河芸術祭」をめぐる
2016年の開催以来、8年目を迎えた「さどの島 銀河芸術祭」。「過去と未来の帰港地」をテーマに、佐渡島を舞台にした芸術祭です。佐渡が持つ自然や文化、独自の生活スタイルなどの地域資源をアートと結びつけ、魅力を発信したいと集まった島民の有志によって発足。これまでの芸術祭とはひと味違ったアプローチで、じわりじわりとその名を広げています。
2024年は8月11日~11月10日まで開催され、総勢25名のアーティストが参加。その一部を上坂さんとともにめぐりました。
《堆鐵》「Iron Stacking: Build Your Way」/ウー・チェン・シン(台湾)


賽の河原からすぐ近くにある「願(ねがい)」という集落の海岸に佇むのは、台湾のアーティスト、ウー・チェン・シンさんのアート。自動車修理業に着想を得たこちらの作品は、車のボンネットをメインに解体された車の部品を取り入れ、自動車製造や消費主義、労働のテーマを探求しています。積み重なったボンネットの姿は、賽の河原の石積みから着想を得て生まれたもの。そんな作品に同調するかのように、海岸にも石を積み重ねた塔が置かれていました。
海と山の狭間に生きる/中村厚子(日本)


北鵜島漁港向いにある北鵜島小学校跡地横には、高さ3メートルほどある自然素材で作られたアートがあります。横浜を拠点とし、世界で活躍するアーティストの中村厚子さんの作品は、すべて佐渡の流木や塩、水といった自然素材を使用。さらに、波や気候、風などの現象を用いることで、中村さんの作ったものと自然が作ったものを意識的に組み合わせてひとつの作品として仕上げています。ちょうど山と海に挟まれた立地では、作品を通して自然との繋がりを感じることができます。
ヘイゼル・バロン=クーパー展/ヘイゼル・バロン=クーパー(イギリス)


2023年に佐渡島の北鵜島を訪れたことをきっかけに、北鵜島とその周辺地域からインスピレーションを得た絵と詩を制作したというヘイゼル・バロン=クーパーさん。常楽寺には、風景と場所の感覚をテーマに活動するアーティストである彼の作品が飾られています。佐渡の伝統や気候、消えゆく言葉、植物や動物など人間以外に焦点を当てているという作品は、色とりどりの水彩画で描かれた絵の上に詩がしたためられ、海外の方から見た佐渡の新たな一面を表現しています。
Kitaushima Art Treasure Hunt/ジョン・ウィリアムズ(ウェールズ=英国)


『スターフィッシュ・ホテル』や『佐渡テンペスト』『裁判』など、受賞歴のある長編映画の脚本・監督を手掛けるジョン・ウィリアムさんが作成したのは、北鵜島の村全体を芸術作品とした「Kitaushima Art Treasure Hunt」。マップに沿って進むと、自然と人間の手で作られた多くの芸術作品を見つけることができます。ウィリアムさん独自の視点で名付けられたスポットを謎解きのように見つける楽しみもあり、時間の経つのを忘れてしまいそうな作品です。マップは旧天理教北鵜島教会で入手できます。
Meaningful Life 七色の人生/上智大学 教育イノベーション・プログラム連携プロジェクト(日本)


旧天理教北鵜島教会には、上智大学に通うさまざまな国籍の学生たちによるアートが飾られています。佐渡の石や貝にペイントなどで装飾を施した作品は、これまでの既存の価値観にとらわれることなく、魅力のある生き方を自ら切り開いていくという意志の表れ。総勢10名によって彩られた空間は、アートの視野を広げてくれる純粋な作品で満ちています。
2025.03.05(水)
文=斎藤美穂子
写真=佐藤 亘