――最近は、どんな本を読んだんですか?
角野 小澤征爾さんと村上春樹さんの対談本『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(新潮社)とか、坂本龍一さんと高橋悠治さんが対談した『長電話』(バリューブックス・パブリッシング)も好きですね。ホテルの別室から電話で対談するっていうコンセプトで、当時の雰囲気が感じられて面白いです。
小澤征爾さんの若い頃の『ボクの音楽武者修行』(新潮社)も素晴らしかった。いっとき、伝記をたくさん読んでいた時期がありました。
――noteでの発信もされていますが、文章を書くのもお好きですか?
角野 考えることは好きで、考えをまとめるのも好きです。けれど、それを世に出すとなると、まとめるのにすごい時間がかかるんです。
クラシックを土台に、新しいことにチャレンジし続ける
――これまでのキャリアを振り返った時、改めて思う自身の強みは何ですか?
角野 クラシックの土台を持った上で、新しいことにトライする人ってほとんどいないんですよ。それが困難さでもあり、自分の強みになっていると思います。
クラシックって保守的な世界ではあるので、王道の真ん中を目指すか、クラシックの世界を出て自分の演奏をするという二通りに大きく分かれます。僕はその縁に立っている。縁から落ちてはいけないけれど、ギリギリで広げていくイメージで活動しています。だからバランスは考えねばならないと思っています。
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――最後に、10年後は何をしていると思いますか?
角野 映画のタイトル通り「不確か」です。この言葉、とても便利で、今日の取材ですでに10回ぐらい使っています(笑)。
角野隼斗(すみの・はやと)
1995年生まれ。千葉県八千代市出身。ピアノ講師の母の元、幼い頃からピアノに親しむ。開成中高卒業後、東京大学理科一類へ進学。同大学大学院在籍中の2018年、ピティナピアノコンペティション特級グランプリ受賞。2021年、ショパン国際ピアノコンクールセミファイナリスト。2023年から世界を舞台に活動するため、ニューヨークへ移住。2024年10月にワールドワイド・デビューアルバム『Human Universe』をソニー・クラシカルからリリース。これまでジャン=マルク・ルイサダ、金子勝子、吉田友昭の各氏に師事。
映画『角野隼斗ドキュメンタリーフィルム 不確かな軌跡』
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公開日:2月28日(金)
配給:BSフジ、ローソン・ユナイテッドシネマ
制作:ネツゲン
公式HP:https://www.bsfuji.tv/futashikanakiseki/index.html
イントロダクション:
2024年7月14日、日本武道館。13,000人の観客が見守る中、圧倒的なパフォーマンスは観る者すべてを魅了した。そして、一人のピアニストが新たな世界への出発を宣言する。幼少期から数字に魅了され、母のピアノ教室で鍵盤に触れて育った角野隼斗。数々のコンクールで輝かしい成績を収めたていた彼はクラシック音楽以外にも興味を持ち、東京大学理科一類に進学。YouTubeに音ゲーの動画を公開し、後に“Cateen”としてピアノ演奏動画も注目を集めるようになった。従来のピアニストとは異なる道を歩んできた角野だが、大学院時代、“最後の思い出”として出場したピティナピアノコンペティション特級でグランプリを受賞。そして、ショパンコンクールに挑戦するものの、ファイナリストに残ることはなかった。しかし、彼の人生は大きく変わり始めていた。その後、全国ツアーは完売、様々なメディアやステージでも観客を魅了する。角野はなぜここまで人気を得ることが出来るのか? パフォーマンス、ビジュアル、学歴、You Tube、運? それだけではない、何か特別なものが彼にはある。クラシック音楽、ピアノ、そして音楽そのものに対する角野の挑戦を描くドキュメンタリー。時代に選ばれたピアニストが歩む茨の道、その先に待つ未来とは。
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2025.02.27(木)
文=ゆきどっぐ
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=川口陽子
スタイリスト=金野春奈(foo)