この記事の連載

「音が消える瞬間を大切に」

――演奏中は、どのような感覚でピアノと向き合っているんですか?

角野 演奏中は、「乗り移る」感覚が近いかもしれません。うまく入り込むと、ピアノが体の一部みたいに、一体化する感覚があるんですよ。

 あとは、ピアノの音が消える瞬間を大切にしています。ピアノって、音を出したら基本的に減衰するんです。声楽やバイオリンのように、再び大きくはならない。それゆえの難しさもあるけど、ピアノの音色の儚さは、そういう所以にあるのではと感じています。

どんな場所でも寝られる性格

――ご自身では、自分の性格をどのように捉えていますか?

角野 神経質ではないので、旅の多い生活を続けられるんでしょう。どんな場所でも寝られるし、イヤホンをすれば音も気にならない。

 性格としては、どちらかというとクールな方に分類されるとは思いますが、面白いことは好きです。「クールな中では、一番温かい人だね」と海外で言われたことがあり、「なるほど」と思いました。

「最近は、場所ごとのルーティンを作ろうと」

――全国ツアーなどで移動が多い生活ですが、自分の生活や感覚を取り戻すためのルーティンはありますか?

角野 時差の関係もあって不規則な生活を送っているから、ルーティンを作ることがなかなか難しいんです。でもすごく憧れがあります。

 最近は、場所ごとのルーティンを作ろうと考えました。タクシーでは新しい音楽を聴く。飛行機に乗る1時間前は、SNSの更新とかメールの返信とか、しなければいけないことをやる。機内ではインターネットが使えなくても困らない読書や言語の学習、考えごとをするようにしています。いつまで続くかは分かりませんが。

2025.02.27(木)
文=ゆきどっぐ
撮影=釜谷洋史
ヘアメイク=川口陽子
スタイリスト=金野春奈(foo)