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 2007年に出演したイ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』で、カンヌ国際映画祭の最優秀女優賞を獲得したチョン・ドヨン。それから十数年経った今でも、韓国を代表する俳優として存在感を放ち続けている。その間、韓国映画も躍進を続けているが、そんな韓国映画に彼女が期待することとは……。


――チョン・ドヨンさんは2007年に、イ・チャンドン監督の『シークレット・サンシャイン』で、カンヌ国際映画祭の主演女優賞を受賞されました。韓国映画が現在のように世界的に注目されるよりも前に、このような賞を受賞したということで、当時の反響も凄かったのではないでしょうか。

 賞をいただいたときには、本当に驚きました。私だけでなく、多くの人たちも驚いたんじゃないかと思います。でも、カンヌで賞をいただくということの重みを本当の意味で感じたのは、いただいたときよりもずっと後になってからかもしれません。ある瞬間に、賞をいただいたことで、観客の皆さんと少し距離ができたように感じたこともあったんです。

 そのために、作品選びに慎重になってしまう時期もありました。観客の皆さんとの距離があいてしまわないように、重い作品だけでなく、もっと近くで触れ合えるような作品に出る努力をしないといけないなと思いました。いまだに、カンヌで賞をいただいたことに対するプレッシャーはあって、それを克服している時間が続いているような感覚もありますね。

――そんな思いもお持ちだったんですね。受賞してから、10年以上の年月が経ちましたが、その間に韓国映画は目覚ましく躍進したと感じます。チョン・ドヨンさんは、韓国映画の躍進をどのように見ていますか?

 確かに、韓国映画は躍進していると感じます。映画だけでなく、韓国や東アジアの魅力を示すものとして、Kコンテンツが大きな役割を担っているとも思います。実際に、私もカンヌ国際映画祭で素晴らしい賞を頂きましたし、韓国の作品が世界中でたくさん評価されていることは大変嬉しいです。そして韓国以外の国でも、韓国ならではの情緒や物語が映画を通して共感されていることを嬉しく思っています。

――韓国映画の今後、更に発展するために、どのようなことを望みますか?

 韓国に限らないことではあるんですが、多様性のある作品がどんどん作られていってほしいと思いますね。大衆性のある作品も大事だと思いますが、それと同時に、『リボルバー』のように完成度の高い作家性のある作品も作られてほしいです。同時にいろんなタイプの作品が作られるといいなと思っています。

――その上で、チョン・ドヨンさんは、どのような作品に出ていきたいですか?

 実はメロドラマ、ラブストーリーが好きなんです。最近は人々の関心が時間を忘れさせてくれるような娯楽性の高いものを求めていることもあるのかもしれませんが、私は何度やっても終わりのない物語が愛の物語だと思うので、そのような作品に出たいと思っています。

2025.02.27(木)
文=西森路代