日本の建築の最高傑作のひとつであり、現在、城内の特別公開(~3月2日まで)をおこなっている“白鷺城”こと、姫路城。この町の“美の象徴”とも言える姫路城のおひざもとには、まだまだ見ごたえのあるスポットが点在している。そのひとつが、姫路市立美術館だ。

 2021年~2024年には「オールひめじ・アーツ&ライフ・プロジェクト」を展開し、アートの力で姫路の魅力を再発見する取り組みをおこなってきた当館。庭園では“霧の彫刻家”中谷芙二子氏の「霧の彫刻」が訪れる人々を出迎えた。

◆モネやマティスの稀少な作品を、常設展示

 姫路市立美術館は、1983年に開館。“白鷺”とたたえられる世界文化遺産・姫路城をあおぐ赤レンガの美術館で、常設、企画、コレクションギャラリーの3つの展示室を持ち、さまざまな展覧会を開催している。

 国の登録有形文化財である赤レンガ造りの建物に、郷土ゆかりの美術をはじめ、国内外の近現代美術の名品を収集。現在、絵画、彫刻、写真、工芸、刀剣など約5,000点の作品を所蔵していて、コレクションギャラリーでは、無料で多様な所蔵品を紹介するほか、常設の國富奎三コレクション室では、モネ、マティス、ピサロ、コロー、ルオー、ユトリロなどのフランス近代美術の名品を展示している。

 そんな姫路市立美術館で注目すべきは、印象派を代表するフランスの画家クロード・モネや、フォーヴィスムの中心的存在であるアンリ・マティスの作品だ。

 学芸員の谷口依子さんが姫路市立美術館のコレクションの魅力を教えてくれた。

「美術館でモネやマティスの作品に出会う機会は珍しくはないでしょう。ただ、当館のモネやマティスの作品は、制作背景や来歴でとてもユニークです。

  モネの作品は、印象派の由来となった近代美術史の中で最も有名な『印象・日の出』の2年後に制作され、その名前から双子のような存在ともいえる作品です。来歴も印象派のコレクターとして有名な菓子職人・ミュレル氏が所蔵していたなど、ほかのモネ作品にはない、独自のバックグラウンドがあります。

 マティスは、国立西洋美術館のコレクションの基盤となった松方コレクションを作り上げた実業家・松方幸次郎氏が所蔵していたという来歴を持ちます。松方が購入した当時、マティスの作品は当時の“現代美術”を購入するようなものであり、まだまだ冒険的な側面が強かったにもかかわらず、松方は6点の作品を購入しています。

 残念ながら、その6点は財政的な問題から売り払われ、世界中に散逸してしまいました。日本の美術館の西洋美術コレクションに、大きく影響を与えたともいえる松方が収集していたマティスの作品が、唯一日本で見られるのが、姫路市立美術館です」

 このように、近代フランス絵画好きの人ならば、一度は目にしておきたいモネ、マティスの作品を、姫路市立美術館では常時公開しているのだ。

2025.02.27(木)
文=CREA編集部
写真=釜谷洋史