雄大な大地がはぐくむ芳醇なアルチザンチーズ

 イギリスの中でも食材が豊かなスコットランド。夏でも水温が低い海で獲れる極上のエビやサーモン、豊かな森で育つキノコやベリー、そしてアンガスビーフにオーガニック野菜、伝統的なレシピで作られるチーズなど、優れた食材は枚挙にいとまがない。実際、ロンドンのレストランでは、スコットランド産の食材が多く使われているという。

 そんなスコットランドの食の宝庫ともいえるのが、ファイフ地方だ。首都エディンバラからはフォース湾を挟んで北に位置する。いまでも「ファイフ王国」の名で呼ばれるこの地には、豊かな大地の恵みと、食のアルチザン(匠)たちの手業が息づいている。

 ファイフ地方セントアンドリュースにある「セントアンドリュース・ファームハウス・チーズカンパニー」は、代々農業を続けるスチュワート家が営むチーズ工房。自家牧場で育った国産乳牛のミルクを使い、伝統的なレシピにのっとって丁寧に作られたチーズは、香りのよさと口の中で溶けるような食感が特徴だ。

のどかな田舎の風景に溶け込むようにして建つチーズ工房。緑を眺められるカフェも気持ちがいい。

 工房には機械らしいものはほとんどなく、ほぼ全ての工程が手作業で行われている。その小さな工房をガラス越しに見学することも可能。ショップでは、自慢のチーズを量り売りしているほか、近隣の農家が手作りするジャムやチャツネ(野菜や果物に香辛料を加えて煮込んだペースト状の調味料)なども並ぶ。こだわりの一品を求めて都市部から足を運ぶ人も多い。

ショップではチーズを量り売り。農家ハンドメイドのジャムやレモンカードなども販売している。

 併設するカフェでぜひ試してみたいのが、チーズとチャツネの組み合わせ。チャツネとひとくちにいっても、メインの材料はリンゴだったりアプリコットだったりとさまざま。なかにはチーズに合うように作られたチャツネもあり、チェダー、ミモレット、ゴーダなど、いろいろなチーズとの相性を食べ比べてみるのも面白い。

左:チーズ+オートケーキ(塩味のビスケット)+梨のチャツネのセット。
右:手作りのドレッシングやジャム、チャツネが並ぶ棚。大手スーパーマーケットでは手に入らないものばかり。

St. Andrews FarmHouse Cheese Company
(セントアンドリュース・ファームハウス・チーズカンパニー)

所在地 Falside Farm Anstruther, KY10 2RT, Scotland
電話番号 +44-1333-312580
URL  http://www.standrewscheese.co.uk/
営業時間 9:30~16:30(4~9月の月~土曜日)、10:00~16:00(10~3月の月~土曜日)、11:00~16:30(日曜日) ※チーズ工房は月~水曜日のみ稼働
定休日 無休

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2014.05.02(金)
文・撮影=芹澤和美