世界を旅する女性トラベルライターが、これまでデジカメのメモリーの奥に眠らせたままだった小ネタをお蔵出しするのがこのコラム。敏腕の4人が、週替わりで登板します。

 第9回は、小野アムスデン道子さんがスコットランドで触れた伝統の重みについて。

貯蔵庫にはウィスキーの好きな天使が?

 濃淡の緑がうねるようなスコットランドの大地はまるで一枚の絵のように美しい。ここでは、現在でも「スコッチ・ウィスキー法」という法律で伝統の製法を守ってウィスキーを蒸留している。

 世界で唯一、ウィスキー街道があるスコットランド北東部にあるアバディーンシャーへ向かった。スペイサイドを拠点に日本人にも馴染みのあるグレンフィディックやグレンリベット、ストラスアイラなどのスコッチ・ウィスキー蒸留所を回るためだ。

ところどころ緑の中にブルームの黄色い花が色を添える

 スコッチ・ウィスキーと呼ばれるためには、スコットランドで作られていることはもちろん、発酵は酵母のみ、アルコール度数94.8%以下での蒸留など、厳しい定義がある。

蒸留のために、ずらりと銅製のポットスティールが並ぶ
グレンフィディック(鹿の谷の意)では蒸留所を見守るように鹿が立つ

 日本語で同名のスコットランド映画が公開されて、馴染みのある言葉にもなった「天使の分け前」。蒸留後に木樽に入れて熟成させるウィスキーは、毎年2~3%ずつアルコールが蒸発していく。それを英語で「angel’s share(天使の分け前)」と言う。天使に分け前を上げる分、樽の中で熟成が進んで深みのある味になっていくというわけだ。

 ほのかにウィスキーの香り漂う貯蔵庫は、ほんとうに天使がいそうな雰囲気だったが、残念ながら撮影は禁止だった。

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2013.11.26(火)
text & photographs:Michiko Ono Amsden